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株式の買取りについて買取価格の減少か損害賠償(雑収入)か

永吉先生

お世話になっております。
税理士の●●と申します。

純資産の減少(買取価格の減少)でよいか、(損益に影響はない)
損害賠償になるのか、(雑収入になる。) を教えてください。

A社がB社を純資産額を基にしてB社株主から買取りました。

その後買い取る前の時期の従業員給与未払があることがわかりました。

買取後B社から従業員に未払給与相当分を支払いました。
(全くその金額でなく減額しています)

支払った未払給与分を買い取り前のB社株主に請求しようと思っています。
この場合未払の債務が増えて、純資産の減少(買取価格の減少)にしたいのですが、
減額するということは、すべての株主に影響が出て

取締役である株主には過失があり、
取締役でない株主には過失がないような気がしてきました。
(未払給与の事も知らないはず)

純資産の減少(買取価格の減少)にしてよろしいでしょうか。

よろしくお願いいたします。

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問

>買取後B社から従業員に未払給与相当分を支払いました。
>(全くその金額でなく減額しています)
>支払った未払給与分を買い取り前のB社株主に請求しようと思っています。

>純資産の減少(買取価格の減少)でよいか、(損益に影響はない)
>損害賠償になるのか、(雑収入になる。)
>を教えてください。

2 回答

(1)民事上の責任追及の可否について(前提)

まず、A社が旧B社株主に対して、金銭の請求が
できるかについてになります。

>A社がB社を純資産額を基にしてB社株主から買取ました。

とのことですが、契約書上、
明確に純資産額に応じて、対価を決定していることとなっているでしょうか。

そうでなく、確定額で定めされている場合、
A社がB社に簿外の未払債務が存在していたことを
理由に金銭の請求が可能であることを
証明できるだけのやり取りや資料があるのかという問題となります。

以下の表明保証などの対策が取られていない場合、
A社がD Dを行ったのか、当事者のやりとりの経緯などから、
B社の簿外債務の存在がどちらが負担すべきであったのか
等の合理的意思解釈の問題となります。

通常のM A契約では、このような不明確な点あるため、
財務諸表等の正確性について、売主の表明保証条項
を加えた上で、簿外債務が顕在化した場合に、損害賠償ないし
補償を受けられるように規定されているとは思います。

この辺りは、契約書がどのようになっているのか等の
具体的事案の詳細が関連するところかと思われますので、
そもそも論ではありますが、いただいた情報から、
明確に判断することが難しいです。

(2)金銭請求を買取価格の減少と評価するのか、損害賠償として評価するのか。

A社が旧B社株主に金銭の請求ができると仮定した場合、

それをどのように評価するかは、具体的な状況に応じて、
判断が分かれているところです。

表明保証の補償請求も、一般的に損害賠償金(雑収入になる)
とされるケースが多いのは事実ですが、

例えば、平成18年9月8日の以下の裁決では、

https://www.kfs.go.jp/service/JP/72/19/index.html

具体的な契約書内容や契約締結に至る経緯などから、
売買代金の返還(先生のご指摘の買取価格の減少)と
評価されており、課税庁の処分を一部取消しています。

結局のところ、売買の契約内容(譲渡の時点で、
売買代金の返還がありうる事由としてそもそも規定
されていたと評価できるのか)やそれを基礎付ける
経緯などから、個別に判断するしかないということと
なります。

表明保証がある場合の簿外債務の
補償は、金額の多寡等にもよるとは思いますが、
他の事由等より、売買代金の返還として、認められやすいとは思います。

この辺りは、個別の証拠を見てみないとなんとも
言えないところですし、最後は争って見なければ
わからない部分もありますので、説明責任を果たした
上で、お客様にご判断いただかざるを得ない部分も
あると存じます。

なお、
>この場合未払の債務が増えて、純資産の減少(買取価格の減少)にしたいのですが、
>減額するということは、すべての株主に影響が出て
>取締役である株主には過失があり、
>取締役でない株主には過失がないような気がしてきました。
>(未払給与の事も知らないはず)

とのことですが、
そもそも売主が複数いる場合には、そもそも請求が
できるのかは、個別の売主との契約内容や経緯によるところです。
一旦は、売主の表明保証の有無及びその事由を
契約書でご確認いただくことからかと思います。
(簿外債務自体の存在について過失が
あるか否かというよりも譲渡当事者の契約の内容の問題となります。
もちろん、その合意内容を推認する事実として、取締役で
あることないことが影響を及ぼすことはあるとは思いますが。)

よろしくお願い申し上げます。