以下の株式交付制度ですが、株式交換は100%子会社を作る制度で、
株式交付は100%子会社でなくてもOKとされます。
しかし、株式交付で100%子会社化もできるという理解でよろしいの
ですよね?
すなわち、株式交換と同じことが、株式交付でもできるかという
質問です。
よろしくお願いいたします。
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問
>以下の株式交付制度ですが、株式交換は100%子会社を作る制度で、
>株式交付は100%子会社でなくてもOKとされます。
>しかし、株式交付で100%子会社化もできるという理解でよろしいの
>ですよね?
>すなわち、株式交換と同じことが、株式交付でもできるかという
>質問です。
2 回答
はい。
令和元年改正会社法で導入される
株式交付制度は、1つの手続内で、
株式交付子会社の各株主の譲渡の申込み等に基づき株式交付親会社が
取得するものです(実質的には株式譲渡の束のようなものと言われます)。
ですので、結果として、すべての株式交付子会社の株主が
譲渡の申込み等をするということであれば、
最終的には、完全子会社化を達成することは可能です。
(実務上、そのような用い方に、他の方法と比べて、有用性があるかは
別問題としてです。)
なお、株式交付は、
「株式会社が他の株式会社をその【子会社(省略)
とするために】当該他の株式会社の株式を譲り受け、当該株式の譲渡人に対し
当該株式の対価として当該株式会社の株式を交付することをいう。」
(改正会社法2条32の2)
とされていますので、例えば、既に過半数の議決権を保有している
親会社が残りの子会社株式を取得するというケースでは利用できません
ので、ご注意ください。
ありがとうございます。
追加なのですが、
> なお、株式交付は、
> 「株式会社が他の株式会社をその【子会社(省略)
> とするために】当該他の株式会社の株式を譲り受け、当該株式の譲渡人に対し
> 当該株式の対価として当該株式会社の株式を交付することをいう。」
> (改正会社法2条32の2)
>
> とされていますので、例えば、既に過半数の議決権を保有している
> 親会社が残りの子会社株式を取得するというケースでは利用できません
> ので、ご注意ください。
>
となると、80%超の株をすでに持っている企業が、少数株主から株を取得して、
完全子会社にはするなど、中小企業の実務で完全子会社化する局面では基本使う
余地はないという理解でよろしいのでしょうか。
この理解なら、むしろ大規模企業向けの制度かと思います。つまり、
中小企業などは従来通り株式交換で子会社化することになりますでしょうか。
加えて、会社法の子会社の判断は、税務のように親族関係とか含んで判断しますか?
もう一つ、株式交付は株式会社のみに認められる制度で、合同会社などは無理ですよね?
よろしくお願いいたします。
追加でのご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 追加質問①
>となると、80%超の株をすでに持っている企業が、少数株主から株を取得して、
>完全子会社にはするなど、中小企業の実務で完全子会社化する局面では基本使う
>余地はないという理解でよろしいのでしょうか。
そうですね。そうなります。
2 追加質問②
>この理解なら、むしろ大規模企業向けの制度かと思います。つまり、
>中小企業などは従来通り株式交換で子会社化することになりますでしょうか。
企業規模というよりは、目的や株主の数などに依存するかと
思います。そもそも、株式交付制度は、株式交換では
完全子会社にしなければならないという点と現物出資に
よる子会社株式の取得の手続的厳格性(検査役の調査等)の調和を図るために
新設されたものです(つまりは、完全子会社化までは希望しないけど、
子会社化はしたいというケースがメイン)ので、
完全子会社化をする目的であれば、単体で利用する意味はあまりありません。
例えば、第1段解として、株式交付で子会社化し、
譲渡の申込等をしない子会社株主等については、第2段解
として、スクイーズアウト等(株式交換を含む)を行う
準備として利用する等は、あり得るかとは思いますが。
これも、会社や株主の属性などの個別事情によって使い分けるところかと思います。
なお、中小企業などでの完全子会社については、
従来より、株式交換によるケースもあれば、現物出資や株式譲渡に
よるケースもあるので、
>中小企業などは従来通り株式交換で子会社化することになりますでしょうか。
というのは、なんともいえません。
3 追加質問③
>加えて、会社法の子会社の判断は、税務のように親族関係とか含んで判断しますか?
(1)一般的な会社上の「子会社」
会社法の子会社については、必ずしも議決権のみで判断される
わけではありません。
会社法の子会社は、会社がその総株主の
議決権の過半数を有する株式会社その他の当該会社が
その経営を支配している法人として法務省令で定めるものをいう。」(会社法2条3号)
とされ、「法務省令で定めるもの」は、
「同号に規定する会社が他の会社等の財務及び事業の方針の決定を支配している
場合における当該他の会社等とする。」(会社法施行規則3条1項)
そして、
「財務及び事業の方針の決定を支配している場合」
は、会社法施行規則3条3項ご参照ください。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=418M60000010012
(2)株式交付制度における「子会社」
なお、株式交付制度における【子会社(省略)とするために】
という点の「子会社」については、
会社法施行規則3条3項2号及び3号による子会社とするため
というのは株式交付時点ではわからない点が多いため、除外されます
(改正会社法施行規則第4条の2)。
4 追加質問④
>もう一つ、株式交付は株式会社のみに認められる制度で、合同会社などは無理ですよね?
そうですね。
株式交換と異なり、合同会社も
株式交付親会社にはなれません(会社法2条32号の2、774条の3第1項1号)
ので、株式会社に限られます。