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賃貸不動産売却時の保証金、保証金償却の取扱い

永吉先生、いつもありがとうございます。
●●です。

賃貸不動産売却時の保証金、保証金償却の取扱いについて
法律的な取扱いは決まっていなくて、実務上の慣習でやりとりを
したり、しなかったりするだけでしょうか?

お客さんは賃貸アパートの売主側で中部圏です。
保証金について
1.入居者から預かっている保証金で償却部分がないタイプ
2.入居者から預かっている保証金で償却部分があるタイプ
両方のタイプがいました。

買主側からは
上記1の金額と2については償却前の金額をくださいと言ってきており、
仲介会社が、間に入っていたため、
宅建協会に取り扱いを確認したところ、引継ぎをするので償却前の
保証金の支払をしてくださいとの回答と聞きました。

法律的な取扱いはあるのでしょうか?
また仮に礼金であっても引継ぎ、支払をする義務はあるのでしょうか?
実務上の話し合いのみで決まっているものなのでしょうか?

あと、分かりましたら保証金償却相当額の支払をした売主の税務上は、
譲渡費用と考えてよろしかったでしょうか?

関西圏では賃貸不動産の売買があった場合には、
保証金等の精算を行なわず買主が保証金等返還債務のみを承継するという取引慣行があります。
このような取引慣行を「保証金の持ち回り」といいます。
https://www.hinokami.co.jp/syotoku/20130726/

https://www.hercules-r.co.jp/blog/view/34

投資家の皆さまの留意点
売主・買主がどちらも関東の方で対象物件も関東の場合、
あるいはどちらも関西の場合であれば、
不動産取引のルールが一緒なのでトラブルは発生しませんが、
売主・買主のどちらかが関東、
あるいは関西であった場合には注意が必要です。
特に、関東にお住いの方が関西の物件を購入する際は、
返還債務に相当する金銭を売買代金から差し引いてくれませんので
契約直前でトラブルにならないようにお気をつけください。
逆のケースもあります。これは実際の取引で経験したのですが、
売主が東京本社の法人で対象不動産は奈良県のオフィスビル、
買主は地元の法人でした。
価格合意が完了し、関東方式の精算方法を記した売買契約書のドラフトを買主様にお送りしたところ、
社長さんから喜びの電話がかかってきました。

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問①〜保証金の償却部分について〜

>お客さんは賃貸アパートの売主側で中部圏です。
>保証金について
>1.入居者から預かっている保証金で償却部分がないタイプ
>2.入居者から預かっている保証金で償却部分があるタイプ
>両方のタイプがいました。
>買主側からは
>上記1の金額と2については償却前の金額をくださいと言ってきており、
>仲介会社が、間に入っていたため、
>宅建協会に取り扱いを確認したところ、引継ぎをするので償却前の
>保証金の支払をしてくださいとの回答と聞きました。
>法律的な取扱いはあるのでしょうか?

この部分については、売主側と買主側の合意によるものとなります。
(宅建協会が決めることではないでしょう。)

通常は、契約書に明示して、このあたりを決定することとなります。

明示がない場合は、慣習なども考慮したその時点の買主と売主の
合理的意思解釈となり、事実認定と評価の問題となり、
法律関係が不明確となりますので、
弁護士が契約に携わる場合、トラブルを回避するためには契約書に
明示するのが一般的でしょう。

なお、これも保証金のうち、償却部分がいつ償却されるのか等
の個別の契約書の定め方なども考慮の上、交渉されることが
多いかとは思います。

2 ご質問②〜譲渡費用となるのか〜

>あと、分かりましたら保証金償却相当額の支払をした売主の税務上は、
>譲渡費用と考えてよろしかったでしょうか?

というよりも、厳密には、税法上も
形式のみで決まるわけではなく、
その契約における譲渡価格が償却部分の支払いを
差し引いた金額となるのか等も含めて、
事実認定と評価の問題となると思います。

税務的な観点からも、契約の趣旨に合わせて、
契約書で明確にしておいた方が良いでしょう。

よろしくお願い申し上げます。