当社のお客様で、コロナで株価が0円になったので、
後継者になるかどうかわからない1人息子に全株を贈与しようとしているお客様がいます。
奥様とは離婚し、親権は奥様が持っていますが、
3人で同居はしています。
法形式上は離婚しているだけの状態で、
婚姻生活の実態は離婚前と変わらない状況です。
子供の年齢は13歳です。
この場合、贈与後の議決権につき、
親権者である元妻が行使するということで問題ないでしょうか?
よろしくお願い致します。
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問
>奥様とは離婚し、親権は奥様が持っていますが、
>3人で同居はしています。
>法形式上は離婚しているだけの状態で、
>婚姻生活の実態は離婚前と変わらない状況です。
>子供の年齢は13歳です。
>この場合、贈与後の議決権につき、
>親権者である元妻が行使するということで問題ないでしょうか?
2 回答
議決権の行使は厳密にいうと、
法律行為というわけではありませんが、
生活実態はどうにせよ、離婚して法的に単独親権を
元妻が有しているということであれば、
親権者の未成年者に対する財産管理権の一環として、
法定代理権を有する元妻が単独で議決権を行使することが可能です。
よろしくお願い申し上げます。
下記の件につき、追加で質問がきました。
社長がいなくなったら成り立たない会社なので、
元妻が社長を追い出すことはないでしょうが、
念のため、役員の任期について保全をしておきたいそうです。
現状は2年です。
希望は社長が辞める意思を表示するまで代表取締役でいたいということです。
第三者の取締役がいる会社です。
この場合、株主である子供(13歳)の親権者である元妻と
一定期間の委任契約を締結するなどの方法により、
社長が辞める意思を表示するまで代表取締役を務める保全はできるのでしょうか?
よろしくお願い致します。
追加でのご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問
>社長がいなくなったら成り立たない会社なので、
>元妻が社長を追い出すことはないでしょうが、
>念のため、役員の任期について保全をしておきたいそうです。
>この場合、株主である子供(13歳)の親権者である元妻と
>一定期間の委任契約を締結するなどの方法により、
>社長が辞める意思を表示するまで代表取締役を務める保全はできるのでしょうか?
2 回答
この場合、おそらく社長と株主である子供(締結は、親権者である元妻)
との株主間契約となるとは思います。
もちろん、契約をすること自体は可能ですが、
仮に契約に違反する議決権を行使したとしても、
会社との関係では、その議決権は有効なものとされます。
大きな額の違約金を定めることなどで、間接的に強制力を
持たせることも可能ですが、親権はないとはいえ、
13歳の子供とのそのような契約は、
公序良俗に反する等で無効とされるおそれもあります。
その他、社長を再任しないまたは解任した場合には、
株式を贈与するとする停止条件付贈与契約をしておくことで、
リスクを事実上低減させる方法もありますが、上記と同様、
無効リスクは残るでしょう。
ですので、リスクをヘッジしたいのであれば、
議決権自体を制限する方法を考えた方が良いかもしれません。
例えば、株式分割等で1株の価値自体を下げた上で、
1株父が保有し、その他の株式について「役員の選任及び解任」のみ
制限する種類株式とする方法などが考えられます。
(株式の評価の問題はありますが、現時点の税務実務では
普通株式と同様に評価されると思われます。)
ただし、いざという時にその1株をどうするのかについては、
遺言などの対策が合わせて必要でしょう。また、
父が認知症等になった場合にどうするのか等の対応も必要となります
(停止条件付贈与等)。
その他、このような事案であれば、
自益信託契約(委託者:子、受託者:父、受益者:子)などを活用することも
一案です。
ただし、すべての議決権について父が行使するのか、受託者の善管注意義務
との関係などについて、指図権の調整なども合わせて検討すべきかとは
思います。
よろしくお願い申し上げます。