税理士法

税理士事務所が合併した場合の名義貸しと会計法人の取扱いについて

永吉先生

お世話になります。

遠方の税理士事務所との合併について、将来、問題が生じる可能性について教えてください。

どうぞよろしくお願い申し上げます。

【前提】

たとえば、沖縄の税理士事務所が東京の税理士事務所の顧客と職員を引き継ぐ。

東京の職員は、リモートワークで沖縄のシステムを使い、帳簿や申告書を作成する。

沖縄の税理士が、東京の職員が作成したものをチェックし、申告する。

東京の売上や経費は、沖縄の税理士事務所で申告する。

【質問】

(1)名義貸し該当性

上記前提の場合、税理士法上の名義貸しに該当し、将来、問題になる可能性はあるでしょうか?

他方、東京のシステムを使い、帳簿や申告書を作成し、沖縄の税理士がこれをチェックし、申告した場合、

名義貸しに該当し、将来、問題になる可能性がある、と考えてよろしいでしょうか?

(2)会計法人の設立

上記前提において、東京の職員の自立を促すため、

沖縄に会計法人を設立し、会計業務を委託しても、将来、問題になることはない、と考えてよろしいでしょうか?

他方、東京に会計法人を設立し、会計業務を委託すると、将来、問題になる、と考えてよろしいでしょうか?

(3)問題ない方法

上記(1)及び(2)において、問題が生じる場合、

問題にならない方法がありましたら、教えていただいてもよろしいでしょうか?

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問①〜名義貸し等について~

>上記前提の場合、税理士法上の名義貸しに該当し、将来、問題になる可能性はあるでしょう
>か?

そうですね。2か所事務所等の問題で、
リモートワークが全て認められないわけではないと私自身は
解することもできるとは思いますが、

元々東京にあった事務所の顧客及び従業員を東京で引き継ぐという
経緯ですと、名義貸しや監督義務違反等とされる可能性は
高いものと考えます。

現行の税理士法が時代に即した適切なものと言えるかは別として、
実質的にも、支店を作るのであれば税理士法人である必要があることと
正面から抵触していますので、問題になる可能性は高いと思います。

>他方、東京のシステムを使い、帳簿や申告書を作成し、沖縄の税理士がこれをチェックし、申
>告した場合、名義貸しに該当し、将来、問題になる可能性がある、と考えてよろしいでしょう
>か?

こちらも同様だと考えられます。

システムの所在地で形式的に判断されるものでは
ありません。

2 ご質問②〜会計法人の設立について~

>上記前提において、東京の職員の自立を促すため、
>沖縄に会計法人を設立し、会計業務を委託しても、将来、問題になることはない、と考えてよ
>ろしいでしょうか?
>他方、東京に会計法人を設立し、会計業務を委託すると、将来、問題になる、と考えてよろし
>いでしょうか?

ここについても、形式論で決まるわけではなく、
実質的な業務をどのように行っているかによるものと思います。

>沖縄に会計法人を設立し、会計業務を委託しても、将来、問題になることはない、と考えてよ
>ろしいでしょうか?

会計業務を委託というのは、純粋に会計業務だけといえる
場合には、問題がないように思いますが、
税理士業務との峻別が曖昧でありますし、
これまで存在していた東京の税理士事務所で行ってきたことと
実質的に同様の業務を行うということですと、
どちらの方式をとっても、その経緯がありますので、
名義貸しや2か所事務所等の認定はかなりしやすいものと思います。

3 ご質問③〜問題のない方法〜

>上記(1)及び(2)において、問題が生じる場合、
>問題にならない方法がありましたら、教えていただいてもよろしいでしょうか?

そうですね。元も子もないと思われてしまいますが、
東京の税理士事務所の顧客と職員を引き継ぐという方法を
安全に行うとすると、そこは税理士法人化をして、東京に支店
を作るということになるものと思います。

おそらく、国としても、上記の方法で、税理士法人化せず、
実質的な支店等を作ってしまうと、あまりにも税理士法の
建前と乖離しますので、黙っていない可能性が高いものと
思います。

よろしくお願い申し上げます。