相続 不動産 所得税

相続放棄における収益不動産の収入帰属と債務の弁済による法定単純承認

永吉先生

いつもお世話になります。

相続人 配偶者と子4人

子のうち2人は生前に家の建築資金など出してもらっているので相続放棄をする予定です。

(質問1)
被相続人は収益不動産をもっています。
不動産収入については、遺産分割の場合は、相続開始時から遺産分割時までの間の収入については相続人が法定相続分で取得することとされています。

これに対して相続放棄の場合は、民法939条で「相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。」とされていることから、相続開始時から相続放棄時までの不動産収入については放棄者は一切取得しないと理解しましたが、間違いないでしょうか?

(質問2)
相続放棄は、放棄するまでの間に預金の解約、債務の弁済など含めて財産を処分すると放棄できないとされています。

・被相続人の住民税や固定資産税などの未払分について相続放棄しない相続人が納税した場合は、どうなるのでしょうか。放棄する予定の人の持分も未払金の持分としてあると思いますので疑問に思いました。

・相続放棄が確定するまでは、未払金や借入金は相続放棄予定者の持分もあるわけで、相続発生時から相続放棄するまでの3か月間は被相続人の一切の債務の支払いは停止すべきと考えると現実的でないように思いますが、どのようにしたらよいのでしょうか?

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問①〜相続放棄と遺産分割前の収益について~

>被相続人は収益不動産をもっています。
>不動産収入については、遺産分割の場合は、相続開始時から遺産分割時までの間の収入につ
>いては相続人が法定相続分で取得することとされています。
>これに対して相続放棄の場合は、民法939条で「相続の放棄をした者は、その相続に関して
>は、初めから相続人とならなかったものとみなす。」とされていることから、相続開始時から
>相続放棄時までの不動産収入については放棄者は一切取得しないと理解しましたが、間違い
>ないでしょうか?

はい。ご理解の通りで間違いございません。

この場合、収入については、子2名の放棄を前提とした
配偶者(1/2)と子2名(各1/4)の法定相続分で帰属
することになります。

2 ご質問②〜法定単純承認等〜

>・被相続人の住民税や固定資産税などの未払分について相続放棄しない相続人が納税した場
>合は、どうなるのでしょうか。
>放棄する予定の人の持分も未払金の持分としてあると思いますので疑問に思いました。

この場合、放棄者の財産の処分にはあたりませんので、
法定単純承認となり、放棄できなくなるということはありません。

ただし、念のため、意思の疎通がわかる資料などは残さない
方が良いでしょう。

例えば、放棄する予定の者が、相続財産から支払うように
指示した・了承の意思表示をしたとされる場合には、理論上は、
財産の処分とされてしまうおそれはあります。
(実務上は問題にならないようには思いますが。)

なお、準確定申告は、放棄後にした方が無難です。

>・相続放棄が確定するまでは、未払金や借入金は相続放棄予定者の持分もあるわけで、相続
>発生時から相続放棄するまでの3か月間は被相続人の一切の債務の支払いは停止すべきと考
>えると現実的でないように思いますが、どのようにしたらよいのでしょうか?

あくまでも、放棄者は支払いに関わらないことです。
相続をする者が勝手に支払ったという
ことであれば、特に問題になりません。

法的には相続をする者が第三者弁済をしただけとするという
ことです。

よろしくお願い申し上げます。