お世話になります。
●●と申します。
議決行使促進策につい質問します。
(前提)
1.甲は上場会社
2.甲は株主総会での株主の議決権行使促進策を考えています。
そこで、議決権行使のインセンティブを与える施策として、
一人につき少額(500円程度)の金券類(QUOカード等)を贈呈する
計画でいます。また、会社は、交際費として税務処理するようです。
(質問)
①会社法120条1項では、「利益供与の禁止規定」を定めており、
上記の計画は、ここに抵触する恐れがないでしょうか?
②実施に際しての、法律上やほかの留意点とはどのようなものがありますか?
(私見)
株主総会後に、出席株主にお土産を配ることは一般的であり、
また、上記の計画は、一人500円と少額であるため、特に問題
ないと考えています。
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問
> ①会社法120条1項では、「利益供与の禁止規定」を定めており、
> 上記の計画は、ここに抵触する恐れがないでしょうか?
2 回答
ご指摘のとおり、有効な議決権行使を条件として株主にQuoカード等の
金券を交付することは、
「株主の権利の行使に関して行われる財産上の利益の供与」(会社法120条1項)
に該当し、原則として禁止されます。
ただし、
東京地判平成19年12月6日は、
①利益の供与が株主の権利行使に影響を及ぼすおそれのない正当な目的に基づくこと
②個々の株主に供与される額が社会通念上許容される範囲内のものであること
③供与の総額も会社の財産的基礎に影響を及ぼすものでないこと
といえる場合には、例外的に許容されるものとしています。
この事例では、個々の株主に500円のQuoカードが配布され、
金額的に②自体の要件は満たすとし、
Quoカード総額が452万1990円のところ、
平成19年3月期経常利益が3億5848万8000円
総資産が150億7296万5000円
純資産が76億8043万6000円
であること、
平成19年3月期の中間配当及び期末配当の総額が6912万3500円
であることと比較すれば、
配布総額は会社の財産的基礎に影響を及ぼすとまではいえないとして、
③の要件を満たすとしています。
一方で、以下の事実から、①の要件を満たさない
とされ、500円のQuoカードの配布は違法とされました。
・株主提案と会社提案が対立していたこと
・議決権を有する全株主に送付したはがきに、
「議決権を行使した株主には、Quoカードを贈呈する」旨の記載のみならず、
「【重要】是非とも、会社提案にご賛同のうえ、
議決権を行使して頂きたくお願い申し上げます」と記載し、
それぞれ下線と傍点を施して相互の関連を印象付ける記載をしたこと
・これまでQuoカードの提供等は行っていなかったこと
・議決権行使比率が例年より約30パーセント増加したこと
以上からすると、純粋な議決権行使促進目的のみであれば、
適法とされることも多いと思いますが、正直なところ、
その株主総会の具体的な議題や会社状況などから、
個別に判断せざるを得ないところです。
上場企業であれば、顧問弁護士もいるでしょうし、
ある程度の内部統制も行われているでしょうから、
個別事案に応じて、顧問弁護士と連携をとりつつ、
しかるべき決定機関にて、意思決定されることが
よろしいかと存じます。
よろしくお願い申し上げます。