不動産 民法

請負契約または業務委託契約書の内容について

永吉先生、いつもありがとうございます。
●●です。

前提として、A社とB社でお金に関することは問題ないとします。

A社側が顧問先で、A者側はお金をもらう方です。
B社側は顧問先ではなくお金を支払う方です。

顧問先から、下記の覚書をいただきました。

AとBは、Bが所有及び将来所有する、末尾記載所在地にて宅地造成工事が
行われるが、Bが希望する造成を、Aの責任において完成させることを目的とした
覚書とする。

1.BはAに造成工事代金として、総額8,000万円を支払い、Aはこの造成工事を
工事会社に支払うものとする。
2.Bは希望する造成工事をAに伝え、Aの責任において工事会社と協力しBの
希望する造成工事を完了させる。
但し、擁壁等の構造物を造る場合は、変更申請及び追加工事費が必要となる。
3.支払方法は、着手時に4,000万円とし、工事完了後、末尾記載土地の地目の変更し
現所有者からBに名義変更登記完了後、残金4,000万円を支払うものとする。
4.Aは、Bの宅地造成コンサルタントとしての役割をするものとする。
5.この覚書に記載なき事項については、双方にて協議し取り決めるものとする。

末尾記載は、数筆の土地として山林、農地、公衆用道路が明記されています。
土地は市街化調整区域にあり農地法上の許可が必要で、造成工事に4年ほどかかり
造成工事完了して農地転用が終了しないと所有権はBにはならないと聞いています。

実質A社は、宅地造成のコンサル、口利きのみをするだけで、造成工事費の外注費
としての支払は発生しないとのこと。

質問

請負契約で役務提供完了時に売上8,000万円計上すればよくて、着手時の4,000万円
は前受金処理で問題はないでしょうか?

1項でAはこの造成工事代金を工事会社に支払うものとするとあるけど、実際は支払いは
しないですが、この文書は訂正してもらった方がいいでしょうか?
訂正をするならどうしたらいいでしょうか?
(実際に造成する会社は別会社でB者が別会社に別途支払いをするとのことです)
この覚書でおかしなところがありましたら、提示いただけると助かります。

コンサルタント料金は、多額でも他人からもらうものでAが売上に計上していれば、
対税務署で問題になることはないと思いますが、合っていますでしょうか?

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問①~着手時の4000万円の処理について~

>実質A社は、宅地造成のコンサル、口利きのみをするだけで、造成工事費の外注費
>としての支払は発生しないとのこと。
>請負契約で役務提供完了時に売上8,000万円計上すればよくて、着手時の4,000万円
>は前受金処理で問題はないでしょうか?

いただいた覚書の内容を拝見すると、
Aが請負契約をして、他社に下請けに出すような
内容に見受けられますが、

>1項でAはこの造成工事代金を工事会社に支払うものとするとあるけど、実際は支払いは
>しないですが、この文書は訂正してもらった方がいいでしょうか?

とのことですと、これは請負契約ではなく、実態としては、
委任契約類似の契約だと思われます。
(例えば、弁護士の費用も、着手金と成功報酬という形で
構成されますが、委任契約です。)

また、この契約書を作成するとAは支払義務を負います。

契約書はあくまでも実態の契約内容を証明するものですので、
それとは異なる契約書を作成すると実際の契約事項は守られ
ないこととなりますので、控えられた方が良いでしょう。

益金計上に関していうと、そもそも月額等の役務提供
の前払いなのか、弁護士費用でいうところの着手金としての性格
のものなのかは覚書からは不明です。
後者であれば、着手金受領時に益金計上しなくてはなりません。
むしろ、その点が不明確な覚書をあえて作成されていることから、
その点、明確にされた方がよいと存じます。

なお、今の覚書だと、委任契約類似のものを請負に偽装し、売上
計上時期を調整するということで、場合によっては、仮想隠蔽にも
なりうるかと思いますのでご注意ください。

2 ご質問②~訂正事項について~

>訂正をするならどうしたらいいでしょうか?
>(実際に造成する会社は別会社でB者が別会社に別途支払いをするとのことです)
>この覚書でおかしなところがありましたら、提示いただけると助かります。

そもそも実際の契約の類型が委任に準じるものである
にも関わらず、請負契約として作成されていますので、
実態にあった形で契約書を作成し直すことをお勧めします。

ご指摘の部分だけの訂正ではなく、一般的なコンサルタント契約に
する等の対応が必要なのではないでしょうか。
(そうでないならば、民事的には、A社にとって、この覚書を締結する
ことは不利益になる、または意味がないということでしか
ないように思います。)

3 ご質問③~コンサル料について~

>コンサルタント料金は、多額でも他人からもらうものでAが売上に計上していれば、
>対税務署で問題になることはないと思いますが、合っていますでしょうか?

こちらのご認識はおっしゃる通りかと思います。

よろしくお願い申し上げます。