いつもお世話になりありがとうございます。
●●と申します。
クライアントであるA法人において、新事業として宿泊施設の建設及び運営を
計画しており、A法人以外の他者(個人及び法人)における出資(事業参画)
形態について検討をしています。
(前提)
○ 法人A(建設業)は沖縄に土地を購入(既に購入済み)し、
そこにスパ施設のような宿泊施設を建築し宿泊業を行う予定をしています。
○ 建築資金は総額で3億円を予定していますが、共同出資(事業参画)
をする事業主(個人及び法人)が数名ほどおり、1口1000万円にて
資金提供を受ける予定です。
○ 4名(法人を含む)ほどの出資者がおり、それぞれ1000万円(1口)
~3000万円(3口)の資金の提供をA社にて受ける予定です。
残りはA社が支出します。
○ 検討している事案としては、宿泊施設から計上される利益の分配及び
事業化により収益が確保できる状態になったときに、不動産に営業権を
つけて譲渡することも考えており、当該売却収入を分配ができるように
したいと考えています。
○ 4名から資金の提供を受けますが、建設を行うA社においては、
建築の技術・ノウハウがあり、材料調達、人員の確保などを
この4名の出資者とは異なり、A社は相当の労力やノウハウ使い
建築するため、施設からの収益や将来の売却時の分配について
単なる資金負担の割合ではない、イニシアチブを取って、少し
有利になるような配分ができないかを考えています。
〇 有限責任投資組合(LLP)、合同会社(LLC)、共有登記、
建設協力金などの形態を考えましたが、A社の代表者からは
シンプルにわかりやすい方法が望ましいということと、A社以外の
4名は、出資はするが口は出さないというスタンスなので、
LLPやLLCなどの登記手続きや、LLCによる法人の
申告手続きなどは行いたくなく、共有登記にするか、建設協力金として
利息を変動として支払っていくことなどを検討しています。
(質問)
〇 建設協力金として、毎年の収支(利益)に応じて金利を変動させることは
出資法など、何か問題になることはありませんでしょうか。
また、あくまでも金利なので、例えば宿泊施設の利益が多く計上できた場合に、
15%とかの金利を支払った場合、金利相当ではなく、寄附とされる可能性も
あるのかと考えていますが、このような変動金利とする契約は有効と考えられ
ますでしょうか。
〇 建設協力金とした場合、将来の売却による譲渡益を分配することが難しいと
考えています。そこで共有登記により不動産を登記すれば、収入及び将来の
売却益も登記割合にて分配できまるので、共有登記が簡易的で分かりやすく
適当かと考えています。
一方で、宿泊事業のイベントの企画などの継続したマネジメントはA社が
行っていきます。
このときにA社に毎期の利益を多めに分配したいのと、将来の譲渡代金に
ついても少し多めに利益を享受できるような契約を考えていますが、
共同契約のような契約書を作成し、利益の配分について合意するなどの
方法が考えられますでしょうか。
税務的に寄附に該当しないかの判断は必要と考えていますが、法的に
その様な合意が可能かを検討しています。
単純に役務提供による支払手数料を他の出資者からA社が請求すれば
いいのではとも考えています。
○ 漠然とした質問で大変申し訳ないのですが、共同事業を行う上での
留意点や注意点、他の組織形態など、永吉先生にてお気づきの点があれば
ご教授頂ければ幸いです。
色々な事業形態における前提を理解していないため、
変な質問になっているかと思います。
宜しくお願い致します。
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問
>〇 建設協力金として、毎年の収支(利益)に応じて金利を変動させることは
>出資法など、何か問題になることはありませんでしょうか。
>
>○建設協力金とした場合、将来の売却による譲渡益を分配することが難しいと
>考えています。そこで共有登記により不動産を登記すれば、収入及び将来の
>売却益も登記割合にて分配できまるので、共有登記が簡易的で分かりやすく
>適当かと考えています。
>このときにA社に毎期の利益を多めに分配したいのと、将来の譲渡代金に
>ついても少し多めに利益を享受できるような契約を考えていますが、
>共同契約のような契約書を作成し、利益の配分について合意するなどの
>方法が考えられますでしょうか。
>単純に役務提供による支払手数料を他の出資者からA社が請求すれば
>いいのではとも考えています
2 回答
実質出資を募り、
利益に応じた分配をする等の事業スキームなどについて、
何が最適かは個別具体性を考慮してとなりますが、
少なくともご提案の方法は避けられた方が良いのではないか
と思います。
>〇 建設協力金として、毎年の収支(利益)に応じて金利を変動させることは
>出資法など、何か問題になることはありませんでしょうか。
こちらについては、金利変動をさせたからといって、
出資法違反になるわけではありません。
なお、その変動額においては、上限金利を超える場合には、
違反になりますので、上限の設定はしておいた方が良いでしょう。
なお、「不特定かつ多数」への勧誘等があると
出資金の受入として、違法になる可能性はありますが、
元々関係のある数名についてのみ声をかけた程度ですと
そのように解釈される可能性は低いです。
>○建設協力金とした場合、将来の売却による譲渡益を分配することが難しいと
>考えています。そこで共有登記により不動産を登記すれば、収入及び将来の
>売却益も登記割合にて分配できまるので、共有登記が簡易的で分かりやすく
>適当かと考えています。
ただ、
>A社以外の4名は、出資はするが口は出さないというスタンス
ということですと、このように登記をすると、結局のところ、
1人の投資者が反対した時点で売却はできなくなります。
デッドロックに陥る可能性があるので、やめた方が良いかと
思いますし、本来行いたい事業投資的な意味合いとは
異なるのではないかと思います。また、共有者がいることで、
事業運営自体も止まりかねないリスクがあります。
(大規模修繕ができない等)。
また、この場合、登記を入れる原因は、贈与とする
のでしょうか。
実質的な出資金を建設協力金とするのであれば、
不動産の対価とはならないため、登記をするには、
何かしらの原因(売買、贈与、保存登記等)が必要です。
一部を建設協力金として、一部を不動産取得費用
とするのであれば一応の理屈が通るのかもしれませんが、
むしろ、その割合の調整などかなり複雑な契約となってしまうのでは
ないかと思います。
>このときにA社に毎期の利益を多めに分配したいのと、将来の譲渡代金に
>ついても少し多めに利益を享受できるような契約を考えていますが、
>共同契約のような契約書を作成し、利益の配分について合意するなどの
>方法が考えられますでしょうか。
このような契約を結ぶことは可能ですが、
結局のところ、その契約書の内容が法的にどのような性質
のものなのかで、判断されます。
つまり、持分に応じない売却となるとその清算は
贈与とされる可能性が高いです。
そうであれば、
>4名は、出資はするが口は出さないというスタンスなので、
>LLPやLLCなどの登記手続きや、LLCによる法人の
>申告手続きなどは行いたくなく、共有登記にするか、建設協力金として
>利息を変動として支払っていくことなどを検討しています。
とのことですと、匿名組合契約が最も性質にあって
いるのではないかとも思料しますが、
>A社の代表者からは
>シンプルにわかりやすい方法が望ましいという
>LLPやLLCなどの登記手続きや、LLCによる法人の
>申告手続きなどは行いたくなく
むしろ、契約目的が事業出資の性質にも
関わらず、実態と合わない法形式のような契約をすることは、
後々大きな法的・税務的な問題を生じさせると存じます。
手続きが煩雑だから等の理由でしっかりとした
法的なリスクをヘッジしないスキーム組成することは
やめた方が良いと思います。
基本的にこのような場合には、
事業スキームを専門家に依頼して一定の手間
などをかけてでも、組成するのは、後々大きな問題
になることが多い類型だからです。
しっかりと実態にあった適切なスキームで
行うことを強くおすすめします。
なお、形式上どのような契約書のタイトルにしたとしても、
その内容等の法的な評価によっては、出資者の属性により、
金商法等の規制が生じるケースもありますので、
この辺りは、個別事情をもとに直接専門家に相談された方
がよいと存じます。
よろしくお願い申し上げます。