いつもお世話になりありがとうございます。
●●と申します。
顧客からの売買に伴う資料の開示(義務)に
ついて質問をさせて頂きます。
(前提)
○ クライアントに金の売買の仲介業務や不動産の売買(直接取引及び仲介業務)を
行っている(上場会社の子会社)A社がいます。
○ たまたま、金の売買や不動産の売買について、過去の取引のあった顧客(個人) から
過去の取引について税金の申告において取得価額が知りたいので、取得(購入) した
とき(仲介を行った当時)の資料を開示(提出)して欲しいという依頼が重なり ました。
(質問)
① 税務上は帳簿書類の保管義務は原則7年間、欠損金の事業年度においては10年間
となっているかと思います。
(参考)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5930.htm
よって、帳簿書類として、依頼があれば調べることは可能と考えますが、
税務調査による 質問検査権の行使ではなく、一般顧客から、過去の取引内容を税務申告用に確認
したいという要望に回答する義務はないと考えていますが間違っていませんでしょうか。
② 顧客サービスとして捉えて回答することはできるのかも知れませんが、
資料の保存義務がなくなる10年を経過した場合は回答をしてあげたくても、回答ができないのですが、
上記の①と同じく、あくまでもサービスの範囲に含まれるので10年を経過した場合は
回答できないという通知をすることで問題ないと理解していますが間違っていませんでしょうか。
③ 上記①及び②の様に税務調査ではないため、回答する義務はないと考えてはいま
すが、他の法律などで資料の開示を求められた場合、資料の保管義務がある期間におい
て、税法以外の法律で回答する義務が発生することはありますでしょうか。
※ さすがにそこまではないと思いますが、裁判所からの開示請求など。
その場合、資料の保管義務が終了した以降では、他の法律根拠により資料開示を
求められても回答することができないため、問題ないという結論になりますでしょうか。
お手数をお掛けいたしますが
宜しくお願いいたします。
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問①〜過去の取得価額の回答義務について
>①税務上は帳簿書類の保管義務は原則7年間、欠損金の事業年度においては10年間
>となっているかと思います。
> (参考)
> https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5930.htm
>よって、帳簿書類として、依頼があれば調べることは可能と考えますが、
>税務調査による質問検査権の行使ではなく、一般顧客から、
>過去の取引内容を税務申告用に確認したいという
>要望に回答する義務はないと考えていますが間違っていませんでしょうか。
はい。ご認識の通り回答する法的な義務はありません。
A社は、顧客に対して、
金や不動産を売却する契約をむすび、
その契約内容として、取引価額(顧客の取得価額)が定まったものです。
取引時点においては、これらにつき、顧客にきちんと説明する義務はありますが(宅建業法35条等)、
過去における取引内容につき、回答する義務は、
契約で特別な義務を合意しない限り、ないという整理になります。
2 ご質問②〜10年経過時の回答義務について
>②顧客サービスとして捉えて回答することはできるのかも知れませんが、
>資料の保存義務がなくなる10年を経過した場合は回答をしてあげたくても、
>回答ができないのですが、上記の①と同じく、
>あくまでもサービスの範囲に含まれるので10年を経過した場合は
>回答できないという通知をすることで問題ないと理解していますが間違っていませんでしょうか。
おっしゃる通り、資料の保存期間が経過しており、
回答がしかねる旨を通知すれば問題ないです。
3 ご質問③〜その他の法律により開示について
>③上記①及び②の様に税務調査ではないため、回答する義務はないと考えてはいますが、
>他の法律などで資料の開示を求められた場合、資料の保管義務がある期間において、
>税法以外の法律で回答する義務が発生することはありますでしょうか。
>※ さすがにそこまではないと思いますが、裁判所からの開示請求など。
>その場合、資料の保管義務が終了した以降では、他の法律根拠により資料開示を
>求められても回答することができないため、問題ないという結論になりますでしょうか。
今回の場合で、
法的な回答義務が生じる場面として想定しうるのは、
以下の3つです。
①弁護士会経由の照会による開示
②裁判所経由での開示-調査嘱託、文書送付嘱託(文書提出命令)など
③宅地建物取引業保証協会からの苦情調査に伴う開示(宅地建物取引業法第64条の5)
もっとも、
いずれの方法も、正当な理由がある場合には、
回答を拒否することができる建付けとなっています。
税法上の保存期間7年ないし10年に沿うかたちで、
会計上の帳簿などの資料を保管しており、この保管期間が過ぎたために、
これらが残っていない場合については、
基本的に正当な理由があると判断されるでしょう。
なお、今回のご質問とは直接関連しないと思いますが、
宅建業者は、不動産取引等に関する帳簿を別途備置き
が必要です(税理士の先生でいうところの業務処理簿
と同様の建付です。)
この帳簿の保存期間は原則5年ですが、宅建業者が自ら売主となる
新築住宅の取引の帳簿の保存期間は10年です。
なお、犯罪収益移転防止法に基づく「確認記録」「取引記録」については、
7年間保存する義務があります。
ただし、これは、監督官庁などからの調査(質問検査権
と同様に間接強制のもの)などでは
開示義務がありますが、顧客に対して開示しなければ
ならないものではありません。
よろしくお願い申し上げます。