当社のお客様で、内縁の妻を受取人とした生命保険の締結をしている方がいます。
離婚歴があり、前妻との間に子供もいます。
このような場合、よく問題になるのが、
死亡時の死亡診断書を内縁の妻では取得できないため、
現実的に、死亡保険金の請求の場面では親族の協力を仰ぐ必要があります。
そこで、下記の方法を考えてみたのですが、
成り立つでしょうか?
医療実務的にどうなのか?、主治医が受けてくれるのか?は分かりませんが、
「法的に」成り立つならば、最悪は裁判に訴えるという可能性もあるかとは思います。
・被相続人の生前に、主治医と「死亡後に死亡診断書を内縁の妻に郵送する」契約を締結
・診断書、郵送料などの実費は生前に支払っておく
いかがでしょうか?
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問
>そこで、下記の方法を考えてみたのですが、
>成り立つでしょうか?
>医療実務的にどうなのか?、主治医が受けてくれるのか?は分かりませんが、
>「法的に」成り立つならば、最悪は裁判に訴えるという可能性もあるかとは思います。
>・被相続人の生前に、主治医と「死亡後に死亡診断書を内縁の妻に郵送する」契約を締結
>・診断書、郵送料などの実費は生前に支払っておく
2 回答
医師法上、医師には求めがある場合の
診断書の交付が義務付けられていますが(医師法19条2項)、
医師が同意するのであれば、この義務とは別に、
同様の診断書に関して
>・被相続人の生前に、主治医と「死亡後に死亡診断書を内縁の妻に郵送する」契約を締結
という契約を任意にすること自体は有効だと考えます。
(死亡後に発生する交付義務を生前に被相続人の立場で、
コントロールできるのかという点について、疑義は一応ありますが、
被相続人と医師で別途契約すること自体まで制限されるもの
ではないと思います。)
ただし、この場合、被相続人の契約者としての地位は、
相続人に承継されますので、相続発生後に相続人から
郵送しないように言われてしまうと医師としては郵送する
義務がなくなる可能性があります。
1つの対策として、第三者のためにする契約(民法537条)として、
内縁の妻も当事者に追加し、受益の意思表示(民法537条3項)
つまり、同契約により医師に請求できる権利を享受する意思を
表示しておくことが考えられます。
第三者に権利が発生した後は当事者はこれを変更し、消滅させる
ことができない(民法538条)とされているからです。
ただし、この権利の発生を受益の意思表示時点と見るのか、
それとも、実際に死亡診断書ですので、死亡後に請求できる
ものとしてその時点で権利が発生するのかは微妙なところです。
そういう意味では、死亡を停止条件とする受益の意思表示をして、
その時点から権利発生についての疑義をなくすという
方法もあるでしょう。
なお、ご指摘の通り、医者がこのような契約をしてくれなければ
話がそもそも進みませんし、
契約書自体は作り込む必要はあるかと思います。
よろしくお願い申し上げます。