お世話になっております。
●●と申します。
既に退職した前社長に対する法人からの貸付金と、前社長が所有している当該法人の株式について、どのようにしたら良いか検討しています。
前社長への貸付金残 約1億円
5年前の退任時に退職金と貸付金2億円は相殺済み。相殺しきれなかった分が残っています。
前社長の持ち株 3,880株 相続税評価額 約8,000万円
(発行済株式総数20,000株、資本金1,000万円)
その他の財産なし
収入は年金のみで、全て老人ホームの費用などでなくなってしまいます。
前社長の判断能力はあります。
相続人は子供3人(全員、当該法人の役員)
この状況に対してとれそうな対策として下記を考えましたが、それぞれにおいて考えられる問題点、疑問点について教えてください。
1.相続人(子供3人)が相続放棄する。(前社長の配偶者、両親、兄弟姉妹は全員他界しています。)
この場合、法人の株式は国から評価額8000万円で買い取る必要がでてくるのでしょうか?
もし、買取りを拒否したらどのようになりますか?
2.前社長が自己破産をする。
この場合、貸付金はなくなりますが(法人は貸倒損失)、法人の株式はどのように扱われるのでしょうか?
3.前社長から法人へ株を売却してもらい、売却代金は貸付金と相殺する。
仮に8,000万円が売却の適正価額とした場合、取得価額が3,880株×500円=194万円なので、配当所得となり多額の納税が発生しますが、納税資金はありません。
もし、譲渡したのちに自己破産をした場合、この税金はどのように取り扱われるのでしょうか?
4.何もせずに放っておく。
仮に前社長に相続が起きても、財産が8,000万円、債務が1億なので、相続税は発生しないので、そのまま放っておく。
たとえば「みなし解散」「登記閉鎖」されても、最終的に清算結了の手続きをしなければ、貸付金はずっと残ったままと考えてよいのですか?
以上となります。
どうぞよろしくお願いいたします。
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問①〜相続放棄について〜
>1.相続人(子供3人)が相続放棄する。(前社長の配偶者、両親、兄弟姉妹は全員他界し
>ています。)
>この場合、法人の株式は国から評価額8000万円で買い取る必要がでてくるのでしょうか?
>もし、買取りを拒否したらどのようになりますか?
基本的に、相続人がいなくなった場合、
国庫に帰属する前に、申立により相続財産管理人が選任されます。
(債権者等がおらず、誰も申立てをしないと放置されている
こともありますが、その場合、被相続人株式も債務も宙に
浮いた状態となります。)
詳細な手続きは省略するとして、
最終的には、プラスの財産がある場合のみ国庫に帰属します。
今回は、債務超過の可能性が高いため、
相続財産管理人が選任されると、
相続財産自体が法人となり、
前社長の財産(法人の株式)を換価して、その金額を
債権者に平等に分配するという一種の清算手続きになります。
相続財産管理人は、換価するため、
前社長の相続人や会社に対して、
株式の購入の交渉をしてくるかと思います。
交渉に応じる必要はありませんが、
その場合、換価のために競売等の手続きに
かけられる可能性自体はあります。
(ただ、買手がつかないことも多い)
また、第三者に売却して、
譲渡等承認請求の不承認に伴う買取請求をしてくる
可能性もあります。
その場合、会社か、指定買取人が買い取るという流れになります。
今回は、前社長への貸付金1億円があるという
ことで、財源規制違反がなければ、会社の貸付金債権と
株式の譲渡対価を相殺して、帳尻を合わせる方向性
が良いかと思います。
なお、最終的に清算手続き完了すれば、貸付金は消滅します。
2 ご質問②〜自己破産〜
>2.前社長が自己破産をする。
>この場合、貸付金はなくなりますが(法人は貸倒損失)、法人の株式はどのように扱われる
>のでしょうか?
こちらも結局は、債務超過における清算手続きですので、
細かい点は別として、破産管財人か、相続財産管理人かの
違いあるだけで、ご質問①と同様になります。
3 ご質問③〜法人への譲渡に伴うみなし配当課税等〜
>仮に8,000万円が売却の適正価額とした場合、取得価額が3,880株×500円=194万円なので、配
>当所得となり多額の納税が発生しますが、納税資金はありません。
>もし、譲渡したのちに自己破産をした場合、この税金はどのように取り扱われるのでしょう
>か?
個人の破産手続の場合、免責許可決定を受けることと
なりますが、所得税は免責対象とならないため、
法的には自力で支払う必要があります。
4 ご質問④〜放置〜
>4.何もせずに放っておく。
>仮に前社長に相続が起きても、財産が8,000万円、債務が1億なので、相続税は発生しないの
>で、そのまま放っておく。たとえば「みなし解散」「登記閉鎖」されても、最終的に清算結了
>の手続きをしなければ、貸付金はずっと残ったままと考えてよいのですか?
そうですね。債務者からの時効の援用(できるかも含む)があれば、
別ですが、法的にはおっしゃるとおりです。
よろしくお願い申し上げます。