いつもお世話になりありがとうございます。
●●と申します。
ネット販売事業者のクライアントから相談があり、
質問をさせて頂きます。
(前提)
○ ネット販売をしている会社(A社)があります。
○ A社のお客(個人)の中には、代引きで注文をしているが受け取りをしない者がいます。
代引きは、会社(A社)で発送手続きを行い、受け取り時に商品代と送料を貰う
ので受け取りをされなかったら、発送費用と返送費用および梱包費用、作業人件費な
どの負担が発生します。
○ ずっと受け取らない顧客には訴訟も辞さないと伝えると、ごくまれにかかった
費用払う人もいますがほとんどは泣き寝入りとなります。
※ 注文を受けて加工する商品のため、再販売は難しく、店ざらしになることが
多い。
○ 同業者の嫌がらせレビューもあります。
○ また、無在庫転売屋もいて、ネットにて出品しているA社の
販売ページ(画像)をそのまま無断で転記して使用し、転売屋が出品者として同
じ商品を出品、販売代金も倍ほどの金額で掲載しています。
転売屋は注文が入ると、A社から購入して、転売します。
→ ヤフーなどに対応をお願いしても介入できないとのこと。
(質問)
会社A社が求めているのは、
○ 目に余る代引き(受け取り拒否)注文者からの送料や結果、売れなくなった当該
商品の代金回収
○ いやがらせのレビューをやめさせる
○ 画像の無断利用者(転売屋)への行為中止や損害賠償
行為をやめさせたい、可能であれば損害賠償請求をしたいと考えますが、
なかなか難しいとは考えています。
ただ、心理的な圧力を与えられないかを考えており、
上記のような行為を行った場合は法的措置をとりますという
通知や抑止効果のある方法などはございますでしょうか。
また、抑止的効果のある方法ではなく、実際に損害賠償請求を
行う方法や対抗策などはございますでしょうか。
ややこしい質問かと思いますが
宜しくお願い致します。
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問
>会社A社が求めているのは、
>○ 目に余る代引き(受け取り拒否)注文者からの送料や結果、売れなくなった当該
>商品の代金回収
>○ いやがらせのレビューをやめさせる
>○ 画像の無断利用者(転売屋)への行為中止や損害賠償
>行為をやめさせたい、可能であれば損害賠償請求をしたいと考えますが、
>なかなか難しいとは考えています。
>ただ、心理的な圧力を与えられないかを考えており、
>上記のような行為を行った場合は法的措置をとりますという
>通知や抑止効果のある方法などはございますでしょうか。
>また、抑止的効果のある方法ではなく、実際に損害賠償請求を
>行う方法や対抗策などはございますでしょうか。
以下、自社サイトにて
EC販売を行っている場合を前提に回答いたします。
2 回答
(1) ご質問①〜代引対策について
>○ 目に余る代引き(受け取り拒否)注文者からの送料や結果、売れなくなった当該
>商品の代金回収
この点については、法的な話をすると、
まずは利用規約等で正当な理由なく受け取りを拒否するような場合
には契約を解除し損害賠償ができることや、
今後の利用を拒絶することができるようにすることが考えられます。
ただし、現実論をいうとアカウント等を偽れば、注文等は
できてしまいます。
ECの場合、住所を基準に判断すれば、一定程度、
利用拒絶に実効性が持てますが、1つづつチェックするのは
手間でしょうから、当該住所への購入の場合、
拒絶するようなシステム設計(番地等の書き方を変えられると
なかなか補足することができないという問題があります。)が
必要ですし、悪意のある利用者の排除は基本的にできません。
1つの方法としては、毎回ですと金額も少額な上、コストもかかる
ことから、年に1回等定期的に弁護士に依頼して、内容証明を送る
という方法も検討されても良いかとは思います。
ただ、その場合、着手金などが生じます。
顧問弁護士などであれば、完全成功報酬制で依頼できる
ケースもあるものと思います。その場合、ECサイトに
顧問弁護士名を載せることも1つの方法です。
なお、これは法的な話ではないのですが、
弊社のお客様で、従来代引きの利用率も比較的
高かった会社さまなのですが、
クレジットカードやその他電子マネー等の支払方法
(つまり、注文時に決済する方法)
を充実させ、代引きを辞めた結果、ほとんど売上げ
変わらずに代引きの問題を解消できたケースもございます。
(最初は不安でしたが、実際にやってみたら何てことは
なかったというものです。)
商品内容、価格帯、利用者層などによると思いますので、
一概には言えませんが、一部の商品などで実験的に行ってみること
も検討しても良いかもしれません。
その他、受領拒否の理由等の分析や統計がわかれば、
ヒントはあるかもしれません。
(2)ご質問②〜レビューについて
>○ いやがらせのレビューをやめさせる
レビューを止めさせるというのは、
なかなか法的な手段としては難しいところがあります。
自社サイト内のレビューであれば、レビュー表示を承認性
にしたり、規約上、削除できる権限をA社に定め、削除ポリシーなどを別途規定し、
それに基づいた対応を行うということも考えられます。
レビューが多いサイトですと、
そこにも手間と人件費は生じてきます。
また、レビューをした個人に対して、
直接損害賠償や削除請求をするとしても、
発信者情報開示請求というプロセスを踏む必要があり、
時間とコストが大きくかかりますので、
悪質なレビューの頻度や内容にもよりますが、
コストパフォーマンスはあまり良くないケースも多いです。
時間がたってしまうと開示自体が不可能な場合もあります。
こちらもレビューの内容によっては、
損害賠償請求自体は可能かと思いますが、
まず相手方を特定するために上記手続が必要なこともあり、
費用倒れとなる可能性も高いところです。
また、内容が本当に違法性を有するものなのか
という点も、専門家の判断が必要でしょう。
(3)ご質問③〜転売対応について〜
>○ 画像の無断利用者(転売屋)への行為中止や損害賠償
転売自体は、現状、特別法(薬機法等)による規制がない限りは、
基本的に違法な行為ではありませんので、利用規約上で禁止する
他ありません。しかし、実際に購入して、販売しているとなると、
A社自体は定価で販売できているため、利用規約違反があったとしても、
「損害」があるのかというと難しいところです。
利用規約などでは、実際に損害賠償ができる旨、どのくらいの金額
か等を定めておいた方が良いでしょう。
(それでも、原則として所有物をどうするかは所有者の意思に
よるため、絶対にその金額が認められるというものでもないでしょう。)
一方で、A社の販売ページをそのまま流用されているということであれば、
商標権や著作権といった権利をもとにページの転用や商品名の使用を
やめさせる方策はあります。
ただし、商標権に基づいて、商品名等の使用の差し止めを請求する場合でも、
A社が販売した正規流通品の転売に対しては、商標権の効力が及ばず、
結果的に差止請求が認められる可能性は低いです。
著作権に基づいて、A社販売ページの画像や文章のコピーを
止めさせることは法的に可能です。
著作権や商標権違反に加え、転売を利用規約で禁じている
こと等を、記載した警告文を送るというのが1つの対応になります。
ただし、こちらも一定レベルで収益が挙げられる場合には
いたちごっこになることが多いです。
その他、現実問題としては、A社サイト上において、
転売に注意してほしい旨の案内を出し、
消費者側に注意喚起するという方法もあります。
よろしくお願い申し上げます。