いつもお世話になっております。
●●と申します。
株式の買い取りについて法的に拘束する方法などが
考えられるかについて質問をさせて頂きます。
(前提)
○ 新設の法人Aを設立する際に個人甲と個人乙が出資をする予定です。
○ 個人甲と個人乙は友人関係で、親族関係はありません。
○ 当初は個人甲が70%、個人乙が30%の出資で法人Aを
設立する予定でしたが、消費税の課税事業者(特定新規
設立法人)の関係上、個人甲が49%、個人乙が51%の
出資割合で法人を設立することを検討しています。
○ しかし、個人甲が70%の出資割合を最終的には
確保したいため、消費税の課税事業者の問題がなくなる
2年後に個人乙の持分を個人甲へ譲渡してもらうことを
検討しています。
(質問)
○ 不安点として、個人乙が出資分を個人甲に譲渡しない
という可能性が考えられるため、法人設立後に2年経過した
時に個人乙の持分を譲渡することを約束した合意書などを
作成しようと考えましたが、法的な拘束力がないと思われ、
法的に拘束力があるような、若しくは心理的にプレッシャーを
与えられるような合意書を作成することは可能でしょうか。
個人甲が買い取るのではなく、議決権確保ができればいいので、
種類株で2年後に会社が買い取るとして、
取得条項を付けるような対応も考えました。
勝手な考えですが、可能であれば関係性が悪化しないような
ゆるやかな方法を望んでいます。
恐れいりますが、宜しくお願い致します。
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問①~個人甲と乙の将来の譲渡
>不安点として、個人乙が出資分を個人甲に譲渡しない
>という可能性が考えられるため、法人設立後に2年経過した
>時に個人乙の持分を譲渡することを約束した合意書などを
>作成しようと考えましたが、法的な拘束力がないと思われ、
>法的に拘束力があるような、若しくは心理的にプレッシャーを
>与えられるような合意書を作成することは可能でしょうか。
一つの方法としては、売買契約の予約というものが
考えられます(民法556条1項)。
予約完結権を甲に持たせることとして、
甲が予約完結権を行使すれば、その時点で売買契約が
成立するとするものです。
ただし、売買契約の予約ですから、締結時点で、
対価の計算方法ないし固定額を定めなければなりません。
実際の作成には、専門家に依頼するコストなどはかかるかと
思います。
また、税務上の問題としては、
みなし譲渡やみなし贈与税についても配慮した上で、
考えなくてはならないでしょう。
(それを考慮しても免税事業者であることが
メリットがあるかは考慮された方が良いかと思います。)
非公開会社の場合、株式譲渡には、別途譲渡承認請求が
必要です。原則としては乙の協力がなければ
できませんが、定款で株主間の譲渡には譲渡承認不要とする
旨の定めをおくことで、乙の協力がない点についてのリスクは
回避できるでしょう。
2 ご質問②~取得条項付株式の利用
>個人甲が買い取るのではなく、議決権確保ができればいいので、
>種類株で2年後に会社が買い取るとして、
>取得条項を付けるような対応も考えました。
取得条項付株式を利用する場合、その決定を
会社の決定に委ねるような定めにすると、そもそも
甲は、過半数の議決権も確保できていないため、
取得できる保証がありませんので、2年経過後等
確定事由を持って、取得できる形で定める必要があるでしょう。
また、取得条項付株式の場合、分配可能額の範囲内
でしか取得ができませんので、結局のところ、取得の可否は
会社の業績に依存することとなるため、注意が必要です。
3 その他
>勝手な考えですが、可能であれば関係性が悪化しないような
>ゆるやかな方法を望んでいます。
そうですね。こちらは現時点で乙が納得しているので
あれば、法的な手法というよりは、説明の仕方かと思います。
売買の予約等であれば、お互いが納得していることが
前提であれば、あまり強制的なものとはとらえられない
のではないでしょうか。
よろしくお願い申し上げます。