代表弁護士 永吉 啓一郎様
いつもお世話になっております。
ご質問がありますので、ご回答をお願い致します。
質問
贈与税の配偶者控除を適用して居住用財産を生前贈与したが、不動産登記をおこなわかった場合ですが、相続が発生した場合にどのうような登記手続きになるのか?
併せて、相続が発生した時に他の相続人から登記をしていないことを理由に遺産分割対象財産であると異議を申し立てられないのか?
以上、よろしくお願い致します。
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
以下では、贈与契約書などの「書面」が存在する
前提で回答します。
なお、書面によらない贈与の場合ですと、
贈与税の対象となる「財産の取得」の時期は、
履行の時(1の3・1の4共-8)になりますし、
民法上も履行がない限り、当事者が解除可能です(民法550条)。
この履行があったかですが、課税実務上は、
原則として、明確な利用状況の変更等(居住者が贈与者から受贈者へ変更になる等)
がない場合には、登記を基準に判断されることとなるので(1の3・1の4共-11)
注意が必要です。
1 ご質問①~登記手続きについて~
>贈与税の配偶者控除を適用して居住用財産を生前贈与したが、不動産登記をおこなわかった
>場合ですが、相続が発生した場合にどのうような登記手続きになるのか?
贈与契約書が存在し、贈与契約が有効なものであることを
前提とした場合、
不動産登記手続きとしては、契約書の贈与の効力発生日を原因として登記する
という話になります。この場合、贈与者の地位を各相続人が相続
していますので、
各相続人と受贈者の共同申請を行うこととなります。
(協力してもらえない場合、確定判決等で可能です。)
なお、例えば、贈与契約書があったとしても、
長期間不動産登記をせずに、贈与税の除斥期間を免れ、
相続財産でもないという申告をするケース等ですと、
実態判断からそもそも贈与契約は仮装されたものであり、
不存在または無効(民法94条)であるとして、
更正+重加とされることもある(東京地裁平成18年7月19日等)ので、
注意が必要です
ただ、今回のご質問の前提として、
配偶者控除を適用する贈与税申告書を
提出しているケースですと、税務的な視点では
リスクは高くないでしょう。
2 ご質問②~他の相続人からの相続財産であるとの主張~
>併せて、相続が発生した時に他の相続人から登記をしていないことを
>理由に遺産分割対象財産であると異議を申し立てられないのか?
贈与契約書があることを前提とすると
これも上記と同様に、結局のところ、生前贈与の契約が仮装された
ものなのか否かというところになります。
単に登記がされていないことだけでは、遺産分割の対象となる
相続財産とは言えませんが、他の相続人は、
長期間登記を放置したことも1つの事情として、契約が仮装された
ものであり、不存在または無効であると主張していくこととなります。
よろしくお願い申し上げます。