相続 医療法

医療法人の1人社員が死亡した場合のその対策について

永吉先生

医療法人の議決権について質問がございます。

【前提】
・検討する法人は、医療法人社団(経過措置型医療法人又は基金拠出型法人)
・社員は理事長のみ(議決権1)
・理事長の相続人は、配偶者及び子

【質問】
・社員が一人の場合、理事長が亡くなったときは、社員の欠亡となり、強制的に解散
となってしまうのでしょうか。
・強制的に解散となってしまうとしたら、強制解散にならないよう定款で入れておく
べき文言はありますでしょうか。
・議決権1が相続されるとしたら、議決権1は、必ず一人で相続するのでしょうか。

よろしくお願い致します。

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問①~医療法人における社員の欠乏と解散事由

>【前提】
>・検討する法人は、医療法人社団(経過措置型医療法人又は基金拠出型法人)
>・社員は理事長のみ(議決権1)
>・理事長の相続人は、配偶者及び子

>・社員が一人の場合、理事長が亡くなったときは、社員の欠亡となり、強制的に解散
>となってしまうのでしょうか。

はい。この場合、法定の解散事由(医療法55条1項5号)
となりますので、当然解散となります。
(なお、法定解散事由のうち、都道府県知事の認可を受けなければ、
解散の効力が生じないものもありますが、社員の欠亡は、認可等の
対象となりません。)

2 ご質問②~解散しないような定款の対策はあるのか?

社員(理事長)1人だけという前提ですと、
定款の記載により解散とならないとすることは難しいと
考えられます。
新しく社員を選ぶとしても、それを選任する者が存在しないからです。

すぐに解散となることを防ぎたいということでしたら、
やはり、社員を増やしておくことかと思います。

(ただし、理事長は、都道府県の認可がない場合には、
医師または歯科医とされますので、長期的に見ると注意が必要です。
例えば、理事長が死亡し、子女が医学部に在学中などの事情があれば認可はおります。)

3 ご質問③~社員権の相続が発生するのか

>・議決権1が相続されるとしたら、議決権1は、必ず一人で相続するのでしょうか。

まず、医療法人の社員権は、社員の一身専属権となりますので、
議決権が相続されることを法は予定していません。

持分会社(合同会社等)の場合には、出資と社員権がセットになって
いるものであるため、持分の承継自体は定款の記載により
特別に認められています(会社法608条)が、

持分ありの法人の場合でも、
出資持分と社員権が必ずしも、セットなものではない医療法人制度に
おいては、社員権(議決権)が相続されるというのは
想定し難いと思われます。

ただし、今回のケースで、理事長に相続が発生した場合、
出資持分(持分ありの場合)自体は相続の対象となります。

つまり、相続人は、解散後の残余財産の分配についての
権利は有するということです。

よろしくお願い申し上げます。