相続 遺言 遺留分

債務超過がある場合の遺留分の計算方法

永吉先生、いつもありがとうございます
●●です。

債務超過がある場合の遺留分減殺請求の計算方法について教えてください。

例えば、
相続人長男A、長男Aの孫養子B、次男C、三男Dの4人とします。
遺言書があったとします。

長男A 遺産5,000万円
孫養子B 遺産5,000万円、債務6,000万円で債務超過1,000万円
とします。
生前贈与はないものとします。

遺留分の計算方法として、債務超過分の考慮はどうなるのでしょうか?

案1
遺産総額1億円-債務6,000万=4,000万円となり、
次男Cと三男Dは
4,000万円×1/4(法定相続分)×1/2(遺留分)=500万円

案2
債務超過分は未考慮で
長男A 5,000円をベースに計算し
次男Cと三男Dは
5,000万円×1/4(法定相続分)×1/2(遺留分)=625万円

案1の計算が正しくて、相続税の計算上、債務超過分は考慮されないけど、
遺留分の計算上は、遺産総額からすべての債務を控除した金額を遺留分減殺
請求の基となる金額になるのということで合っていますでしょうか?

http://www.asahi-net.or.jp/~zi3h-kwrz/so/iryudebt.html

https://souzoku-pro.info/columns/iryubun/13/

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問

>長男A 遺産5,000万円
>孫養子B 遺産5,000万円、債務6,000万円で債務超過1,000万円
>とします。
>生前贈与はないものとします。
>案1
>遺産総額1億円-債務6,000万=4,000万円となり、
>次男Cと三男Dは
>4,000万円×1/4(法定相続分)×1/2(遺留分)=500万円
>案2
>債務超過分は未考慮で
>長男A 5,000円をベースに計算し
>次男Cと三男Dは
>5,000万円×1/4(法定相続分)×1/2(遺留分)=625万円

なお、説明方法の便宜のため
長男A及び孫養子Bへの積極財産の承継は、
相続させる(特定権利承継)遺言であることを前提に
回答します。

2 回答

「遺留分」の計算としては、ご指摘のとおり、案1が正しいです。

ただ、その前提として、
>長男A 遺産5,000万円
>孫養子B 遺産5,000万円、債務6,000万円で債務超過1,000万円

という遺言はすることができません(またはできたとしても
以下のとおり、債務超過は発生しません。)。

被相続人の債務について、特定の誰かに寄せるという
方法は、

①相続分の指定をする方法(なお、相続させる旨の遺言は、遺産分割方法の指定ですが、
相続分の指定も伴います)

②負担付相続させる旨の遺言をする方法

のいずれかがあります。
債務を承継させること自体は遺言事項ではないからです。

(1)①の方法

①の場合には、あくまでも相続分の指定ですので、
積極財産(+財産)と消極財産(−財産)における取得割合と負担割合は同率になります。
ですので、AとBの取得する積極財産が同じであるにも関わらず、
債務だけを違う割合で負担させるということはできません。

(2)②の方法

②の方法は、積極財産を取得する代わりに負担をつける
という方法です。

この場合、(債務)負担は、積極財産の価格を上回る
ことができません(民法1002条)。つまり、Bは
債務超過分1000万円については負担しません。

そして、この1000万円の債務はどうなるかですが、
相続分に従って配分されることになるところ、
上記のように相続させる旨の遺言で各財産をAとBに
取得させた場合、相続分指定の効果も伴いますので、

相続分は、A:B=5000万円:5000万円ー5000万円=0

となりますので、Aが100%負担することとなります
(負担の場合は、取得した積極財産の価値が下がるというイメージです)。
つまり、Aが債務超過分の1000万円の債務を負担することとなります。

さらにCDに加えて、Bも遺留分侵害額請求をAに対してすることとなります。

よろしくお願い申し上げます。