医療法人から院長への金銭の貸付について質問がございます。
【前提】
・個人事業主としてクリニックを営んでおりましたが、医療法人化しました。
・個人に付いている借入金(事業用)がありますが、運転資金のため法人への付け替
えはダメと県に言われました。
・多額の役員報酬を個人へ出さないと個人での借り入れが返済できないのですが、所
得税負担がきついと相談を受けました。
【質問】
高い役員報酬での所得税がもったいなので、医療法人から個人へ金銭の貸付を行って
借入返済をしたらどうかと考えております。
県に確認したところ、医療法人にて従業員全員を対象とした金銭貸付規定を設けれ
ば、医療法人から個人への貸付は可能といわれました。
こちら以外で何か気を付けることがありましたらご教示頂けますと幸いです。
ご確認の程、よろしくお願い致します。
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問
> 高い役員報酬での所得税がもったいなので、医療法人から個人へ金銭の貸付を
> 行って
> 借入返済をしたらどうかと考えております。
> 県に確認したところ、医療法人にて従業員全員を対象とした金銭貸付規定を設
> けれ
> ば、医療法人から個人への貸付は可能といわれました。
> こちら以外で何か気を付けることがありましたらご教示頂けますと幸いです。
2 回答
ご存知のとおり、医療法人においては、
剰余金の配当を禁止する規定(医療法54条)の、
医療法人は非営利法人であるところ、
剰余金の使途は医療の向上に還元するべきであるとの趣旨から、
原則として、個人に対する貸付けを禁止とする運用が
なされています。
この例外として、厚労省の見解によって
①役職員への金銭等の貸付は、附帯業務ではなく福利厚生として行うこと
②この場合、全役職員を対象とした貸付に関する内部規定を設けること
の要件を充たせば、当該貸付けが許されるとされています。
気をつけることとしては、
福利厚生としてということなので、
就業規則などと同様に、
医療法人と各役職員との契約内容となることから、
院長以外の全役職員にも、この内部規定が適用されてしまう
ということです。
すなわち、
医療法人側においては、ある従業員から、
この内部規定に基づいて貸付けを求められた場合には、
医療法人としては、内部規定にしたがって、
貸付けを行わなければならないことになります。
一方で、
貸付に関する内部規定については、
・貸付けの申請要件
・貸付けの申請の手続
・貸付けを行うか否かの判断基準、など
規定内容を作りこむ必要があるかと思われますが、
これが理事長以外借りられないような規定を
作ってしまうと、実質的には、
福利厚生目的ではないとされるおそれもあるので
注意が必要です。
ただし、実際のところ、このあたりの運用は、
都道府県によりまちまちで、
規定さえあれば文句を言われないところや
内容面まで確認されるところなどがあります。
医療法人の法人成りにおける借入金の問題は、
結局のところ、個人の所得税負担を高めるのか(役員報酬の増額)、
福利厚生の名目で、実質的な理事長への貸付けかという
ようなところになってしまっているので、
医療法人維持のための運転資金であること(個人費消ではないこと)の
証明をしっかりとした場合には、認める方向で
良いのでは?と個人的には思いますが、現状の国の考え方は
上記のようになっています。
よろしくお願い申し上げます。