税理士の●●です。
表題の件について、ご教示ください。
●前提事項
※1)土地の売買契約締結日 2019年1月24日
※2)土地の所有権移転登記日 2019年6月12日
隣接地との境界線上にある塀が越境していて、引渡しの時期までに、
売主は隣接地所有者と越境に関する合意書を交わすものとする特約があり、
この問題解決のため、契約から所有権移転登記(引渡し)まで5ヶ月を要した。
※3)現在、新型コロナの影響で新築工事が遅れており、
※1から二年後の居住開始は不可能。
※2から二年後の居住開始も微妙な状況。
●質問事項
質問1)土地の先行取得時期は、※1)と※2)のどちらでしょうか?
質問2)居住開始が※2の二年後に間に合わない場合、期限延長の救済はありますか?
ご質問ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
ご質問の趣旨としては、
住宅ローンの控除(措置法41条1項)における
「土地等の建築条件付以外の先行取得・分離借入型」
(措置法令26条8項6号)
の適用に関するものかと思いましたので、その前提で回答します。
1 ご質問①〜土地等の「取得の日」について
>※1)土地の売買契約締結日 2019年1月24日
>※2)土地の所有権移転登記日 2019年6月12日
>隣接地との境界線上にある塀が越境していて、引渡しの時期までに、
>売主は隣接地所有者と越境に関する合意書を交わすものとする特約があり、
>この問題解決のため、契約から所有権移転登記(引渡し)まで5ヶ月を要した。
>質問1)土地の先行取得時期は、※1)と※2)のどちらでしょうか?
所得税法関連の解釈の場合、
特別の趣旨や合理性がない限り、
引渡し時期が基準と解釈されると思います。
この点、措法通達41-6でも
引渡しを受けた日によるものとされています。
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41-6 措置法第41条第1項各号に規定する土地又は当該土地の上に存する権利(以下第41条関係において「土地等」という。)の取得の日は、当該土地等の引渡しを受けた日による。(平11課所4-11、課法8-8、課評2-10追加、平15課個2-7、課審3-7改正)
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なお、厳密には、この「引渡し」は、
登記日と必ずしも一致しないのですが、
税務実務上は一般的には登記基準で問題ないとは思います。
2 ご質問②〜期限延長等の救済について
>※3)現在、新型コロナの影響で新築工事が遅れており、
>※1から二年後の居住開始は不可能。
>※2から二年後の居住開始も微妙な状況。
>質問2)居住開始が※2の二年後に間に合わない場合、期限延長の救済はありますか?
通常の住宅ローン控除における6ヶ月以内の居住時期の延長措置の
根拠は、
「新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための国税関係法律の臨時特例に関する法律」
に基づくものなのですが(同法6条)、
同法律では、土地等の建築条件付以外の先行取得・分離借入型
における「新築の日前2年以内に取得した場合」については、
このような措置の対象とはなっていないようです。
ですので、現状の法令を前提にすると延長措置はありません。
ただ、新型コロナウィルスの影響でということであれば、
上記の法律の趣旨と同じかと思いますので、
税務署等を含めて事前に交渉するというのはありかとは思います。
ここでいう「新築の日」とは、その家屋が住宅として機能を
有する状態で所有者に帰属した日を指すとされており、
実務一般には保存登記を基準に判断しますが、
登記完了前であっても、家屋自体の利用が先行している
場合などについては、その時点を「新築の日」とすることも
概念上はあり得るところですので、このあたりについて、
事前交渉するというのは方法論としてはあるかと思います。
(措置法通達41−5)
ただ、土地の取得日の引渡しを登記基準で見るにも関わらず、
建物の新築における引渡しは、登記基準で見ないとすると
事案によっては、齟齬が生じますので、そのあたりも
考慮しつつ、
あくまでも、新型コロナウィルスの影響を排除することを
目的として形式的な理由(行政がOKをだしやすい理由を作る)
としてという意味にはなります。
よろしくお願い申し上げます。