民法 会社法

監査役と守秘義務

弁護士法人ピクト法律事務所
代表弁護士 永吉 啓一郎様

いつもお世話になっております。
ご質問がありますので、ご回答をお願い致します。

質問
株式会社の会計監査の際に、監査役から社会保険料の未払金が未計上を指摘され粉飾決算であるとして外部の報道機関などに開示がなされてしまいました。当社は継続して社会保険料の会計処理は現金主義で処理をしております。このことを説明をしても、粉飾だとわめき散らし困惑しております。監事の守秘義務違反などとのように対応すべきかのご教示をお願い致します。

以上、よろしくお願い致します。

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問

>質問
>株式会社の会計監査の際に、監査役から社会保険料の未払金が未計上を指摘され粉飾決算で
>あるとして外部の報道機関などに開示がなされてしまいました。当社は継続して社会保険料の
>会計処理は現金主義で処理をしております。このことを説明をしても、粉飾だとわめき散らし
>困惑しております。監事の守秘義務違反などとのように対応すべきかのご教示をお願い致しま
>す。

2 回答

監査役は、会社に対して、善管注意義務の内容として、
会社に損害を与えないために守秘義務を負っているものと
考えられます。

一方で、監査役は粉飾決算等の違法行為については、
それを止める義務を負う(止めないと逆に善管注意義務違反となる)
ため、

>監査役から社会保険料の未払金が未計上を指摘され粉飾決算であるとして外部の報道機関な
>どに開示がなされてしまいました。

とありますが、
たとえば監査役が粉飾決算だと判断し、
それを監査報告書に記載し、株主を通じて外部に開示されてしまったような場合には、
守秘義務違反の問題は生じないと思われます。

それに対し、
監査役が個人的に外部の報道機関などに情報を漏らした場合には、
善管注意義務としての守秘義務違反になると考えられます。

今回は、そもそも粉飾決算ではないという前提だとすると
善管注意義務違反を理由として、外部への発信行為を止めるように
内容証明等で通知をし、会社に損害が生じてしまったケースであれば、
損害賠償を求めていくという流れになるかと思います。

具体的な進め方については、事案に応じて、個別対応や個別事情の
考慮が必要かと思いますので、一般論としては、上記以上に回答できないのですが、

一旦は、
弁護士等を通じて、内容証明等の通知をすることに一定の効果は
あるのではないかと存じます。

よろしくお願い申し上げます。