お世話になります。
行方不明株主の取扱いについて教えてください。
どうぞよろしくお願い申し上げます。
【前提】
昭和46年設立の株式会社
過去、2人の従業員に株券を贈与した。
現在の株主名簿、別表2は、上記株主を除き、代表取締役85%、3人で100%の会社になっている
最近、株券不発行会社の登記をしている。
事業譲渡などに備えて、代表取締役100%にする予定
会社は行方不明株主に連絡せず、排除したい
【質問】
(1)公告による行方不明株主排除
株券不発行会社になる変更を公告すると、行方不明株主を排除することができるのでしょうか?
株券不発行会社に登記したあと、再度、株主は会社に株主であることを申し出る必要があることを公告し、
一定期間経過後、行方不明株主を排除することができるのでしょうか?
(2)株式買取資金の供託の必要性
(1)で行方不明株主を排除できない場合、株式買取資金を供託することによって
行方不明株主を排除することになるのでしょうか?
(3)カンタンに行方不明株主を排除する方法
上記以外でカンタンに行方不明株主を排除する方法があれば教えていただいてもよろしいでしょうか?
(4)行方不明株主を放置した場合
将来、事業譲渡などが成立した後、行方不明株主が出現した場合、
代表取締役は損害賠償請求を受けることになるでしょうか?
【私見】
以下を参考にすると、本事例を解決するには、
代表取締役90%以上の会社にし、行方不明株主から買取り
または
株式買取資金を供託する方法を実行した方がよいと考えます。
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 前提
>行方不明株主の取扱いについて教えてください。
そうですね。その状況ですと、主に利用される
方法は、引用されたURLのとおり、以下の方法かと思います。
①所在不明株主の株式売却制度
②特別支配株主の株式等売渡請求制度
③株式併合による少数株主の排除
以下、これについて個別のご質問に回答します。
2 個別の質問対する回答
(1)ご質問(1)
>(1)公告による行方不明株主排除
>株券不発行会社になる変更を公告すると、行方不明株主を排除することができるのでしょう
>か?
株券不発行会社にしたとしても、既存の株主を
排除できるわけではありません。
>株券不発行会社に登記したあと、再度、株主は会社に株主であることを申し出る必要がある
>ことを公告し、一定期間経過後、行方不明株主を排除することができるのでしょうか?
これは、上記の①所在不明株主の株式売却制度を指しているでしょうか。
個別の要件については、ご引用いただいたURLに記載が
あるので、省略しますが、
この制度を利用するためには、
5年間継続して、株主名簿記載の住所に
定時総会の招集通知が到達しなかったという
証拠が必要(一般的には、6回招集通知が不到達で戻ってきている
もの)となります。
株主総会を実質行っていない、または行っていたとしても
招集通知を送っていないということですと、
次回の定時総会に招集通知を送付して、その後、5年送り続ける
必要があります。
(2)ご質問(2)
>(2)株式買取資金の供託の必要性
>(1)で行方不明株主を排除できない場合、株式買取資金を供託することによって
>行方不明株主を排除することになるのでしょうか?
引用のURLに記載のある供託は、単に株式を取得した
対価が、相手が行方不明のため、供託をすることで、後に
遅延損害金を払うことを免れるために供託を利用できる
という意味でしかありません。
したがって、供託すれば、株式の取得ができるわけではなく、
上記手続きを利用することで株式を取得し、その取得代金を
供託できるよというだけです。
(3)ご質問(3)
>(3)カンタンに行方不明株主を排除する方法
>上記以外でカンタンに行方不明株主を排除する方法があれば教えていただいてもよろしいで
>しょうか?
スキームとしては、全部取得条項付株式を利用する方法や
組織再編を利用する方法もありますが、上記3つの手続き
より簡便ではないので、いただいた情報からすると
上記3つの手続きのいずれかが良いと思います。
3つの手続きについての比較は、最後の【私見について】
の箇所で回答します。
(4)ご質問(4)
>(4)行方不明株主を放置した場合
>将来、事業譲渡などが成立した後、行方不明株主が出現した場合、
>代表取締役は損害賠償請求を受けることになるでしょうか?
事業譲渡であれば、特別決議で可能ですので、株主総会を
招集して行えば(招集通知は、会社が把握している株主名簿記載のもの)
85%保有しているということで、特に問題はないかと
思います(もちろん、同族会社等に安い金額で売却する等を
すれば、善管注意義務違反には問われる可能性があります)。
ただし、株式譲渡によるMAなどは行えなくなりますので、
選択肢は、少なくはなりますね。
(その他、利用できる方法でも、法務リスクがあるとして、
値段を下げる交渉にも使われたりします。)
また、事業譲渡をしたとして、その対価をどうするのか、
会社をどうするのかを考えるに際して、
常に同様の問題を抱え続けることになりますので、
排除してしまった方がベターです。
3 私見について
>【私見】
>以下を参考にすると、本事例を解決するには、
>代表取締役90%以上の会社にし、行方不明株主から買取り
>または
>株式買取資金を供託する方法を実行した方がよいと考えます。
上記のとおり、排除した方が、ベターなのは間違いありません。
①〜③についてどの方法によるかですが、
①所在不明株主の株式売却制度は、上記のとおり、
招集通知等が5年継続して到達していない証拠が
必要となります。もし、招集通知等を送っていない
ということですと、この方法が利用できるのは、
5年以上、待つ必要があります。
②または③は、どちらが良いかはケースバイケースですが、
②特別支配株主の株式等売渡請求制度の方が、
裁判所を利用する必要がないことから、手続き自体は
楽なものとなります。
あとは、現状、代表が85%の株式を保有している
ということですので、5%増えるように増資する必要が
ありますが、時価より著しく低い金額で行うと
税務上も法務上も問題がでてきますので、会社の
株式の時価によっては、代表のキャッシュ的に難しい
ということもあるでしょう(現物出資等を利用する方法も
あります。)。
③の方法であれば、特別決議(2/3)で行うことが
可能ですので、現状の株式関係で行えますが、
裁判所への売却許可の申立て等をする必要がありますので、
手間といえば手間ということになります。
このあたりの方法は、実際に専門家なしで手続きを行うことや
どの方法が個別事案に応じて適切かの判断は難しいところです。
弊社でも、会員の先生のご紹介であれば、初回相談料無料で、
Zoom等のウェブ会議にも対応しておりますので、個別のご相談も
ご検討いただければと思いますし、
実行する際には、この辺りの分野の経験・知見がある弁護士等に
ご依頼された方が良いかと思います。
よろしくお願い申し上げます。