民法

一方的に相手方の義務を課す内容を追加した請書の有効性について

永吉先生

お世話になります。

取引相手方からの注文書に対応するかたちで役務提供に関する請書を提出する際、
もともと注文書に記載されていない、相手方に義務を課すような内容を追加した
ような場合、基本的には、合意がなされたとは言えず、その追加した内容についての
契約は成立しないと考えられますが、状況によっては契約成立すると言えるような
要件などあるものでしょうか?
なお、注文書と請書のやり取りに先立ち、基本契約書の締結や、見積書の提示は
行っていない前提です。

(例)
・一定期間、先方から応諾しない旨の通知がない場合
・義務を課す内容と言えども、これまでの取引慣行から守ってもらっていたことを
注意的に追加したにすぎないと主張できるような場合

上記に記載したような例も含め、個人的には難しいと感じておりますが、何か
方法があるようでしたら、ご教示いただけますと助かります。

お手数おかけいたしますが、よろしくお願いいたします。

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問①〜相手方からの申込に条件付きで承諾する場合

>取引相手方からの注文書に対応するかたちで役務提供に関する請書を提出する際、
>もともと注文書に記載されていない、相手方に義務を課すような内容を追加した
>ような場合、基本的には、合意がなされたとは言えず、その追加した内容についての
>契約は成立しないと考えられますが、状況によっては契約成立すると言えるような
>要件などあるものでしょうか?

>(例)
>・一定期間、先方から応諾しない旨の通知がない場合
>・義務を課す内容と言えども、これまでの取引慣行から守ってもらっていたことを
>注意的に追加したにすぎないと主張できるような場合

法的には、相手方からの注文書(契約の申込み)に対して、
条件を付した上での承諾は、申込み対する承諾にはならず、

新たな申込みとして評価されます。

ですので、ご指摘のとおり、新たな申込みに対して、相手方から承諾
したと評価できるだけの事実がなければ、契約は成立
していないことになります。

例えば、当該請書の後に、報酬等を相手方が支払ってくれた等の
事情があれば、相手方が新たな申込みに対して、承諾したと
評価できる場合もあるかとは思いますが、
本当に、相手方に課した義務が生じているのかというのは、
その課した義務内容にもよるところで、個別事案を離れて
評価することが難しく、最終的には裁判所の確定があるまでは
わからないということになってしまうでしょう。

2 ご質問②〜他の方法について

>何か方法があるようでしたら、ご教示いただけますと助かります。

上記のように、このような方法は争いが生じれば、
どちらに転ぶかわからないものですので、

きっちりと先方に
「契約に条件をつけましたので、
それでもご注文いただける場合には、FAXまたは電子メール
にて、改めてご連絡ください。」

等、証拠が残る形で、対応した方が良いでしょう。

よろしくお願い申し上げます。