税理士法 税理士賠償責任

社長貸付金を保険積立金に振替えるスキームについて

永吉先生

いつも大変お世話になっております。
税理士の●●です。

生命保険とリース会社からの借入を組み合わせて
社長貸付金を保険積立金に振替えるスキームがあり、
リース会社に対して、税理士による社長貸付金についての残高証明書を
求められています。
この残高証明書を発行することによるリスクとしてはどのようなことが考えられますでしょうか?

スキームの内容ですが、
法人から社長へ貸付金があり、
①法人と社長間で債務承認弁済契約を結びます
②リース会社と法人間で債権譲渡契約
③債権譲渡相当額の生命保険に加入(保険料はリース会社が立替払します)
④保険契約に質権を設定
⑤社長からリース会社に月々の返済をする
というものです。

わかりにくいようでしたら、追加で説明いたします。
どうぞよろしくお願い致します。

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問

> 生命保険とリース会社からの借入を組み合わせて
> 社長貸付金を保険積立金に振替えるスキームがあり、
> リース会社に対して、税理士による社長貸付金についての残高証明書を
> 求められています。
> この残高証明書を発行することによるリスクとしてはどのようなことが考えら
> れますでしょうか?

2 回答

あり得るとすれば、
リース会社との関係で仮に社長貸付金が無効や金額が
異なる場合等に、税理士の先生が証明した残高証明書を信じて、
当該スキームを組んだとして、不法行為に基づく
損害賠償請求をされるリスクがあるというところです。

過去の裁判例では、一般個人が借入の保証人
となるケースで、税理士の先生が作成した申告書を
信じて保証人になったという事案で、税理士の先生への
損害賠償が認められたものがあります。

今回は、リース会社相手ですので、そこまで
税理士の先生の責任を裁判所が認めるかというと
微妙なところではありますが、リース会社としては、

株主等への責任回避を含めて、
債権の存在を信じてもやむを得ない事情があり、
もし問題があれば、税理士さんにも責任追及がしやすいという形式を
整えるために要求しているということかと思います。
(担当者がどういう認識かは別として)。

> ①法人と社長間で債務承認弁済契約を結びます

ということで、契約書を作成するでしょうから
現実化するリスクはかなり小さいと思いますが、
裏を返せば、リース会社としてもこれで十分で
しょうということで、税理士の先生を巻き込む
やり方自体は、ちょっとどうなのかとは思います。

ただ、お客様のために証明するのか、
証明書がなければ本当に実行できないのか等を
考慮して、意思決定することになるかと思います。
(もちろん、断ったとしても税理士の先生が
責任を問われるものではありませんので、おすすめは
しません。)

よろしくお願い申し上げます。