信託と遺産分割の関係について教えてください。
被相続人が委託者兼受益者で、次の受益者に相続人が
指定されている場合、信託財産は相続人である次の受益者が
信託契約に基づいて取得することになると思います。
この場合、その相続人である次の受益者が信託を撤回して被相続人からの
信託財産について、他の相続人と遺産分割協議をする、といった
ことは可能なのでしょうか。
個人的には不可能と考えていますが、よく分からないので
教えてください。
よろしくお願いいたします。
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問
>被相続人が委託者兼受益者で、次の受益者に相続人が
>指定されている場合、信託財産は相続人である次の受益者が
>信託契約に基づいて取得することになると思います。
>この場合、その相続人である次の受益者が信託を撤回して被相続人からの
>信託財産について、他の相続人と遺産分割協議をする、といった
>ことは可能なのでしょうか。
2 回答
>被相続人が委託者兼受益者で、次の受益者に相続人が
>指定されている場合、信託財産は相続人である次の受益者が
>信託契約に基づいて取得することになると思います。
まず、前提として、信託財産自体の所有権は、
受託者が有するものですので、
「相続人である次の受益者」が取得するのは、
信託財産ではなく、信託財産から利益を受ける
権利である「受益権」ということになります。
>この場合、その相続人である次の受益者が信託を撤回して被相続人からの
>信託財産について、他の相続人と遺産分割協議をする、といった
>ことは可能なのでしょうか。
信託の場合、契約内容は多様ですので、どのような
定めがあるのかを確認しなければ、何とも言えないところですが、
>その相続人である次の受益者が信託を撤回して
というのは、委託者と受益者の合意による撤回を意味していますでしょうか?
その場合、遺言による信託である場合は別として
今回のような信託契約であれば、被相続人の委託者の地位が
相続人に相続されます(信託契約に別段の定めがあれば、それによります)。
なので、結局のところ、委託者(相続人全員)と受益者(「相続人である次の受益者」)
による合意で信託を終了させるという意味かと思います。
(こちらも信託の終了後の処理について契約上定めがある場合には、
その定め方によっては、他の人の同意も必要となる場合もあります)。
ただ、このような合意による撤回により、信託財産を委託者に戻す
という前提ですと、相続財産になるのか?という議論自体はでてきますが、
信託の撤回等の場合、遡及効が生じるわけではなく、将来に向けて生じると
いう理解が一般的です。
つまり、信託財産は、相続発生後に合意により相続人となる者達に
戻るということになりますので、
厳密な意味では、遺産分割の対象にはなりません。
仮に、遺産分割協議書の中に、信託財産を分けるという
条項があったとしても、それは、遺産分割の合意と評価
されるものではなく、売買または交換等、通常の民事上の合意
と評価されることになると思われます。
よろしくお願い申し上げます。