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高度障害保険金の指定代人請求と相続の単純承認

永吉先生、お世話になります。

当社のお客様で社長(夫)が高度障害状態になり、
高度障害保険金の指定代理請求をされる方がいます。

指定代理請求人は妻で、入金口座は妻名義です。

この後、相続が起きた場合ですが、
妻は相続を放棄する可能性があります。

この場合、妻名義の口座に
本来であれば夫名義のお金が入金されています。

この場合、入院給付金を受け取ってしまった場合のように、
意図せず、単純承認になってしまうのでしょうか?

そうであれば、かなり理不尽な状態ですが・・・。

しかし、相続放棄をした人の預金口座に
本来であれば夫名義の財産であったものが
残り続けることにも違和感を覚えます。

この場合、単純承認になってしまうのか?

そのままでは単純承認になってしまうならば、
どのようにすれば、相続放棄ができるのか?

この2点につき、ご教示ください。

よろしくお願い致します。

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問と回答の結論

>指定代理請求人は妻で、入金口座は妻名義です。
>この後、相続が起きた場合ですが、
>妻は相続を放棄する可能性があります。
>この場合、妻名義の口座に
>本来であれば夫名義のお金が入金されています。
>意図せず、単純承認になってしまうのでしょうか?

>そうであれば、かなり理不尽な状態ですが・・・。
>しかし、相続放棄をした人の預金口座に
>本来であれば夫名義の財産であったものが
>残り続けることにも違和感を覚えます。

>この場合、単純承認になってしまうのか?

>そのままでは単純承認になってしまうならば、
>どのようにすれば、相続放棄ができるのか?

上記の事案では、法定単純承認にはならず、相続放棄が
可能と考えられます。

ただし、妻がその金銭を費消してしまうと相続財産の
処分行為として法定単純承認となるおそれがありますので、
妻名義の他の財産と混同しないように区別して管理し、
費消されていないことが明らかになる資料を保管できる
と良いでしょう。

2 回答の理由

相続開始前に指定代理請求をして、妻が金銭を受領した場合、
夫の財産である金銭を預かり、管理しているに過ぎません。

この場合、
妻に対する相当額の返還請求権(預かり金の
返還請求のようなもの)が、夫の相続財産となります。

相続放棄をする際に、家庭裁判所への相続財産目録
にこの債権を記載しておき、
上記の通り、その金額を分別管理し、
他の相続人または相続財産管理人(相続人がいない場合)
の請求に応じて、支払いをすれば、問題なく相続放棄
が可能と考えられます。

よろしくお願い申し上げます。

永吉先生、お世話になります。

ご回答ありがとうございます。

> 妻名義の他の財産と混同しないように区別して管理し、
> 費消されていないことが明らかになる資料を保管できる
> と良いでしょう。

> 相続放棄をする際に、家庭裁判所への相続財産目録
> にこの債権を記載しておき、
> 上記の通り、その金額を分別管理し、
> 他の相続人または相続財産管理人(相続人がいない場合)
> の請求に応じて、支払いをすれば、問題なく相続放棄
> が可能と考えられます。

現実問題として、指定代理請求のために新規で口座を作るということはほぼなく、
妻名義の預金口座に振り込まれるケースがほとんどだと思います。

この場合、お金に色はなく、妻名義の財産と同一になり、
区分管理ということは現実的にできないケースが多いと思います。

そこで、被相続人のために、何のためのお金をいくら使ったという事実関係を整理し、
残金がいくらと仮定するというか、一応の計算をして、
家庭裁判所への相続財産目録に載せるという理解でいいでしょうか?

妻が夫のために、妻名義のお金を使うこともあるので、
ここは決め打ちするしかないのかと考えました。

●●先生

追加でのご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問

>現実問題として、指定代理請求のために新規で口座を作るということはほぼなく、
>妻名義の預金口座に振り込まれるケースがほとんどだと思います。

>この場合、お金に色はなく、妻名義の財産と同一になり、
>区分管理ということは現実的にできないケースが多いと思います。

>そこで、被相続人のために、何のためのお金をいくら使ったという事実関係を整理し、
>残金がいくらと仮定するというか、一応の計算をして、
>家庭裁判所への相続財産目録に載せるという理解でいいでしょうか?
>妻が夫のために、妻名義のお金を使うこともあるので、
>ここは決め打ちするしかないのかと考えました。

2 回答

お金に色がないのはその通りかと思いますし、
事実関係のみならず、被保険者(後の被相続人ですね)のために
使用した金銭の領収書等を残し、
残金の管理や計算等をきっちり管理した事実を残して
おけば良いかと思います。

>そこで、被相続人のために、何のためのお金をいくら使ったという事実関係を整理し、
>残金がいくらと仮定するというか、一応の計算をして、
>家庭裁判所への相続財産目録に載せるという理解でいいでしょうか?

そうですね。それで十分と捉える
考え方もありますが、

結局のところ、法定単純承認の議論は、
事実関係や管理方法、金額の大小等により、
個別に判断されてしまう部分も大きいので、

弊社が弁護士として関与するのであれば、
リスクヘッジとして、指定代理請求により、
取得した金額と同額を、

他に利用していない妻名義の口座があるならその口座、
ないのであれば、新たな妻名義の口座(ネット銀行等であれば、
すぐに作れますので)に入れてもらうことをするかなとは
思います。

もちろん、既に分別せずに、夫のために利用した事実
があるという場面でしたら、先生のおっしゃる通り、一応の計算をして、
遅くとも相続開始後には、しっかり別管理をしている状況(口座を分ける)
を作ることまではすると思います。

よろしくお願い申し上げます。