税理士法 税理士賠償責任 その他

会計データの引渡し義務

弁護士法人ピクト法律事務所
代表弁護士 永吉 啓一郎様

いつもお世話になっております。
ご質問がありますので、ご回答をお願い致します。

質問
税理士事務所が顧問契約書に基づき毎月TKCの会計ソフトで会計データの処理をしています。その結果を毎月入力結果を示す試算表の報告と紙ベースで社長に引き渡しをしております。この場合顧問契約を解除したら顧問先には、tkcの会計データの所有権は税理士事務所にあるとした東京地裁判決25年9月6日を根拠として、毎月紙ベースで会計データと同じ内容を手渡しをしていると考えtkcの会計データは渡さない対応は適法でしようか。ご教授ください。

以上、よろしくお願い致します。

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問

>質問
>税理士事務所が顧問契約書に基づき毎月TKCの会計ソフトで会計データの処理をしていま
>す。その結果を毎月入力結果を示す試算表の報告と紙ベースで社長に引き渡しをしておりま
>す。この場合顧問契約を解除したら顧問先には、tkcの会計データの所有権は税理士事務所に
>あるとした東京地裁判決25年9月6日を根拠として、毎月紙ベースで会計データと同じ内容を
>手渡しをしていると考えtkcの会計データは渡さない対応は適法でしようか。ご教授くださ
>い。

2 回答

そうですね。
東京地裁判決平成25年9月6日は、
結局のところ当事者間でどのような合意内容であった
のかという点をメインに個別事情(契約の経緯や業務中のやり取り等)
に基づいて判断しているに過ぎませんが、

特段会計データを引き渡す等の合意がない
通常の顧問契約の内容であれば、
成果物を紙ベースで納品していれば特に問題はなく、
データを引渡す義務まで負うものではないと
判断して良いものと考えられます。

ただし、渡している紙ベースのものが
税法上、備え付けとして必要なものは満たしていることは
原則として必要であると考えられますが、

常時、顧問先がプリントアウト可能な状態であった
等の事情があれば、そこまでしなくても問題ないと
上記裁判例は言っていますが、あくまでも他の事情も
考慮に入れた個別事情における判断(また、裁判官に
より判断が分かれそうだなというところ)であり、
特にここの部分は全ての事例でそうだという
ところまではちょっと言い切れないかなというところです。

この場合、常時プリントアウトが可能であり、
顧問先の責任で備え付けをする旨を契約書で定めるなり、
備え付けが可能な状態であることをメールでアナウンスし、
顧問先の責任で行うべきであることを明確にしておくなり
の対応までしていると安心かと思います。

よろしくお願い申し上げます。