いつも大変お世話になっております。
表題の件について、ご教示頂ければ幸いです。
(株主構成)
A社
株主 甲50% 乙50%
B社
株主 乙100%
※ 甲・乙は個人であり、婚姻関係にあります。
上記の株主構成である法人が2社あり、現在、甲乙夫婦が離婚協議を行っている状況です。
今後の経営は全て甲が行い、乙は一切関与しないので、乙所有の株式を全て買い取りたいと考えています。
この場合、離婚後は甲・乙は親族関係でなくなり、利害関係が対立する立場となりますので、
甲としてはなるべく低額で株式を買い取りたいと考えております。
【買取案1】
A社株式50%をB社が取得し、B社株式の100%をA社が取得する方法
【買取案2】
A社株式50%及びB社株式の100%を甲が取得する方法
【買取案3】
A社株式50%及びB社株式の100%をC社(甲が100%株主)が取得する方法
(質問1)
離婚後に、上記の買取案を実行した場合、純資産価額評価よりも低い金額ですが
乙が納得した売買金額を時価として取引することは問題ありますか?
(質問2)
離婚協議の条件として売買する場合と、離婚協議成立後に改めて
売買契約を締結する場合とで結論に変化は生じますか?
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問①~離婚後に株式を買取る方法について
>離婚後に、上記の買取案を実行した場合、純資産価額評価よりも低い金額ですが
>乙が納得した売買金額を時価として取引することは問題ありますか?
民事上は、いくらで株式を売却するのか、取得するのかは
自由ですので、法的な問題はありませんが、
甲・乙が離婚の条件として、何を希望しているのか等に
よるところがありますね。
例えば、乙が離婚ができるなら株を渡しても良いという
話の場合、離婚が成立してしまえば、既に目的が達成された
ことから、後からやっぱり株は渡さない等(金額が高くないと渡さない含む)
になるリスクがありますね。
なお、税務上の問題は、各取引類型(個人・法人)によって、
所得税法、法人税法、相続税法の「時価」の評価方式になりますので、
(各類型毎でどの税目が適用されるかはご質問の趣旨とは
異なると思うので、割愛します)
何か確定的なことが言えるわけではないので、難しいところですが、
対立している当事者間で
売買ということになれば、あまりに各評価方法と乖離したもので
なければ、実務上は否認するのはなかなか難しいところだとは思います。
(このあたりは、弁護士を入れて交渉した上で、この金額
になった等の付随的な事情も関連してくるかと思いますが。)
2 ご質問②~離婚の条件とする場合と離婚後にする場合の差異
>離婚協議の条件として売買する場合と、離婚協議成立後に改めて
>売買契約を締結する場合とで結論に変化は生じますか?
よくいわれるのが、離婚が条件の場合としても、
離婚後でなければ、親族間取引にあたるため、税務のことを
考えれば、離婚後に行うべきというものがありますが、
「時価」評価の問題として捉えれば、おかしい話だとは思います。
法的な評価で言えば、離婚協議中であることが明確であり、
既に対立しているということであれば、
離婚の条件として行っている以上、離婚成立後に改めて
売買契約を締結することと差異が生じる理由がないからです。
そういう意味では、離婚の条件とするものとしては、
財産分与によるものとなりますので、その中で調整する
方法が離婚に伴うものであることは明確にはなるかとは思います。