民法 未分類

国の詐害行為取消権と抵当権設定行為(急ぎます)

永吉先生

基本的なところかも知れませんが、民法について不知のため、件名につき教えてください。

先日ニュースになった、以下の事件ですが、報道を前提とすると、民法の詐害行為取消権を通法42より国税の徴収に準用した事例と考えられます。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO60636950S0A620C2CR8000/

この詐害行為取消権の要件ですが、債務者(=納税者)が債権者(=国税)
を害する法律行為をしたことが要件とされているようですが、事前に銀行に連絡して根抵当権を設定させる行為も、債務者の法律行為と言えるのでしょうか。設定する銀行の法律行為であることは理解できますが、その逆も成り立つのかよく分かりません。

加えて、上記記事で弁護士が「判決で詐害行為が結果的に認定される可能性が仮にあるとしても、銀行にもステークホルダー(利害関係者)がいる。当時の判断として、国税債権のために担保設定を見送るという判断はあり得ないのではないか」とコメントしています。これだけ見れば、取消権のリスクを踏まえて根抵当権設定したと読めます。

一般論としてお尋ねするのですが、仮に詐害行為取消権で訴えられた場合、受益者が反論するとすればどのような反論になりますか?立証責任が債権者(=国税)なので、悪意がないという反論になるのでしょうか。

分かりづらい質問で申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問①〜法律行為性について

>この詐害行為取消権の要件ですが、
>債務者(=納税者)が債権者(=国税)を害する法律行為をしたことが要件とされているよ
>うですが、
>事前に銀行に連絡して根抵当権を設定させる行為も、債務者の法律行為と言えるのでしょう
>か。設定する銀行の法律行為であることは理解できますが、その逆も成り立つのかよく分か
>りません。

抵当権の設定行為は、財産の処分行為であり、法律行為です。

債務者(または物上保証人)が抵当権の設定をする
場合には、債権者と合意(抵当権設定契約等)
しなくては、設定できませんので、
その合意がまさしく法律行為となります。

2 ご質問②〜詐害行為取消権に対する反論について

>一般論としてお尋ねするのですが、仮に詐害行為取消権で訴えられた場合、受益者が反論す
>るとすればどのような反論になりますか?立証責任が債権者(=国税)なので、悪意がない
>という反論になるのでしょうか。

詐害行為取消権への反論は、各要件に対して、多岐に渡りますので、
個別事例を離れて、一般論として回答することが難しいのですが、

詐害行為性等の他の要件が満たされているという前提であり、

先生のご指摘のように、国が民法上の詐害行為取消権を
行使するということですと、受益者側で「債権者を害すべき
事実を知らなかったこと」(善意)を立証する必要があります。
(これは国税の処分に関する税務訴訟ではないので、
証明責任も別で考える必要があります。)

もちろん、立証の程度の問題で、国が債権者であることから
裁判官の自由心証の程度で「事実上」の立証程度は異なってくる
ということはあるとは思います。

よろしくお願い申し上げます。