いつも大変お世話になっております。
表題の件について、ご教示頂ければ幸いです。
法人の従業員宅の賃貸借契約において、
契約者=従業員本人
入居者=従業員本人
連帯保証人=法人
という契約状況となっております。
この従業員が無断欠勤のうえ音信不通の状態になっており、
さらに直近の賃料が滞納となりました。
法人としては、連帯保証人として賃貸人に滞納賃料を支払いましたが、
このまま不払いの状態で居座られると迷惑なので、賃貸借契約を解除して欲しいと考えています。
(雇用契約については、無断欠勤及び音信不通を理由とした自然退職又は解雇する前提です。)
連帯保証人の立場で、
1.入居者を退去させること
2.賃貸借契約を終了させること
は可能でしょうか。
また、このようなトラブルの解決方法についてご助言を頂ければ幸いです。
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問
>法人の従業員宅の賃貸借契約において、
> 契約者=従業員本人
> 入居者=従業員本人
> 連帯保証人=法人
>という契約状況となっております。
>
>この従業員が無断欠勤のうえ音信不通の状態になっており、
>さらに直近の賃料が滞納となりました。
>連帯保証人の立場で、
> 1.入居者を退去させること
> 2.賃貸借契約を終了させること
>は可能でしょうか。
2 回答
(1)退去や契約の終了について
ご質問への回答からすると、残念ながら、
法律的には、連帯保証人は賃借人の賃料不払いを
理由に、入居者を退去させたり、賃貸借契約を
終了させる権限はありません。
つまり、今後も賃貸人からは、
賃借人たる「従業員」の賃料滞納があると、
連帯保証人たる「法人」に請求がされることとなり、
「法人」はそれに応じる義務があります。
なお、そうすると賃貸人が契約を解除しない以上、
連帯保証人は賃料をずっと支払う義務を負うのか
という点は、賃貸人が放置している事例では、
信義則という一般原則を利用して、請求できる金額
を限定してバランスを取るというのが出口としては
ありますが、少なくとも1年程度の賃料は認め
られてしまうでしょう(東京地裁昭和51年7月16日、
東京地裁平成25年6月14日)。
(2)今後の対応について
今後の対応としては、
まずは賃貸人に連絡を取り、
「従業員」が音信不通となっており、無断欠勤にもなっているので、
賃貸借契約を解約してほしい旨を依頼することが考えられます。
しかし、賃貸人の判断として、連帯保証人たる「法人」が支払を継続する限りは、
すぐには賃貸借契約を終了させないという判断もあり得るところです。
そのため、賃貸人が、賃貸借契約の終了に協力的ではない場合には、
「法人」が3か月程度支払いを意図的に止めることで、
賃貸人側に、賃貸借契約を解除する動機と法的理由を作ることが考えられます。
ただ、この方法をとっても、賃借人不在のまま裁判が進むと、
最終的な明渡が完了するには、執行まで行うことが必要となります。
そのため、「法人」は最終的には、明渡までの家賃相当額や原状回復費用を
負担しなければならないでしょう。
もちろん、その金額は、従業員に請求はできるのですが、
ここは、賃貸人と保証人のどちらが貸倒リスクを負うのか
というと、保証人となります。
よろしくお願い申し上げます。