お世話になります。
税理士の●●です。
債権の回収方法についての相談になります。
宜しくお願い致します。
債権者:A(Aは債務者Bの孫であり、Bと養子縁組をしています。)
債務者:B
貸付金:10,900,000円
AはBに対し、昭和58年に 10,900,000円を貸付けました。
この資金は、昭和57年に死亡したAの母(Bの子)の死亡保険金になります。
保険金の受取人はAですが、当時Aの年齢は7歳であった為、祖母であるBが
管理することなり、BはAと一緒に暮らすためのマンションをその資金で昭和
58年にB名義でマンションを購入しました。
Bはマンション購入の際、Aから借用した旨の「金銭消費貸借契約書」を作成し、
「金利 年2%」をAに支払う旨を記載しております。
この度、BのA以外の相続人(Aからみると叔母)との関係を考慮して、
Bが健在なうちに貸し借りを精算しようと思いましたが、Bに返済する資金が
ないため、裁判所に調停を申し立ててB名義のマンションを代物弁済により
返済する旨の結論を出してもらいました。
なお、調停条項には、貸付金元金:10,900,000円と利息:7,876,071円の
合計:18,776,071円の支払い義務があることを認める、と記載されています。
(利息は、年2%単利で計算したものになります。)
質問
①債権者にとって貸付金に係る利息は雑所得になると思いますが、今回の利息
787万円を収入と認識する時期はどのように考えることになるでしょうか。
1090万円の2%相当の21.8万円がその年毎の所得と考えるのか、あるいは、
調停で結論が出た(代物弁済が行われた)年の所得と考えるのか、どちらで
考えるべきでしょうか。
なお、コロナの問題等があったため代物弁済はまだ実行できていません。
調停条項には「昭和58年10月付金銭消費貸借契約に基づく貸金返済債務と
して、令和元年12月現在、金18,776,071円(元金:1,090万円、利息 787万
6071円)の支払義務がある事を認める。」とあり、弁済の方法については
「相手方の有する別紙物件目録記載の土地建物の所有権を譲り渡し、申立人は
これを譲り受ける。」という代物弁済の方法が記載されています。
②調停により代物弁済する事が決定されましたが、代物弁済を実行する場合には
税務上クリアしなければならい点がいくつかあるため、AとBの合意の基で
相続時精算課税制度による贈与によりB名義の不動産をAに変更することも
案として考えています。仮に、調停で明確に「代物弁済」とされたものを
違う方法(相続時精算課税制度による贈与)で名義を移転した場合、法律上
何か問題となることはあるでしょうか。
なお、Bの財産は上記不動産を含めても相続税の基礎控除額以下のため、相続税
の心配はなく、また、この方法が可能であればAからの借入金はAに相続させる
旨の遺言書をBが作成する予定です。
その他、注意しなければならない点等ございましたらご教示ください。
Bが高齢のため解決方法を早く決めたいとの要望があり、恐れ入りますが早めに
回答を頂けましたら幸いです。
どうぞ宜しくお願い致します。
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問①~利息の計上時期について
>債権者にとって貸付金に係る利息は雑所得になると思いますが、今回の利息
>787万円を収入と認識する時期はどのように考えることになるでしょうか。
>1090万円の2%相当の21.8万円がその年毎の所得と考えるのか、あるいは、
>調停で結論が出た(代物弁済が行われた)年の所得と考えるのか、どちらで
>考えるべきでしょうか。
これは非常に難しい問題(必ずしも調停での前提事項を前提
に課税判断が行われるわけではないという点で)なのですが、
今回は、
>金利 年2%
と契約書上、定められているということですので、
この合意が形式のみではなく、実質的な(法的な)合意であると
された場合には、理論的に厳密な理解では、
>1090万円の2%相当の21.8万円がその年毎の所得
と考えることになるでしょう。
ただ、親族間等の消費貸借契約の場合、
利息の定めがあっても、実態的に一切回収も
していないということだと、契約書上で、
形式的に定めているのみで、代物弁済実行時に
解決金として受け取った収入に過ぎないという評価もあり得るところです。
(ただ、今回は契約書上の利息金額で調停まで行っていますので、
そのように認定される可能性は高くないと思います。)
なお、厳密には暦年ごとの収入金額と考える場合、
複利計算した上で、その差額は税務上どのように評価するか(債務免除
なのか何のなのか)ということは、一応問題となる(その場合、
利息と遅延損害金の峻別等も厳密には必要になる)のですが、
そこまで言い出すと紛争が起こった場合の
税務上の処理を行うことが難しいということになるので、
実務上はそこまでは厳しく捉えられていないと思います。
心苦しいですが、このあたりは、ご依頼者様に
説明の上で、判断していただくしかない部分かとは思います。
2 ご質問②~対応案について
>調停により代物弁済する事が決定されましたが、代物弁済を実行する場合には
>税務上クリアしなければならい点がいくつかあるため、AとBの合意の基で
>相続時精算課税制度による贈与によりB名義の不動産をAに変更することも
>案として考えています。仮に、調停で明確に「代物弁済」とされたものを
>違う方法(相続時精算課税制度による贈与)で名義を移転した場合、法律上
>何か問題となることはあるでしょうか。
>なお、Bの財産は上記不動産を含めても相続税の基礎控除額以下のため、相続税
>の心配はなく、また、この方法が可能であればAからの借入金はAに相続させる
>旨の遺言書をBが作成する予定です。
民事上(紛争発生という意味)は、当事者が納得していれば問題はないのでしょうが、
(その場合、民事上は、代物弁済合意は解除されたものと評価されるか、
贈与契約は仮装されたものであり無効と判断されるでしょう。
調停まで終結した状態で、税務上の理由でということとなると後者とされる
可能性が高いかと思います。)
>税務上クリアしなければならい点がいくつかあるため、
ということですと、このクリアしなければならない
という点について、仮想隠蔽等と評価される可能性も比較的高い
のではないかとも思いますので、行われる際は、注意が必要かと思います。
また、仮に代物弁済合意の解除をするのであれば、
ご質問①で単利で計算していることとの関係は、
より一層、辻褄が合わないかと思います。
よろしくお願い申し上げます。