相続 不動産 民法

土地を使用貸借で賃借している建物解体費用の負担者

永吉先生、いつもありがとうございます。
●●です。

土地を使用貸借で賃借している建物解体費用の負担者について教えてください。

先代の相続の際に、土地は長女が相続しました。
建物は先代の相続発生前に長男が自分でS44年に建物を建築し、第三者に賃貸していました。
現状は、古すぎて空き家です。
土地の権利関係は使用貸借です。

長女には子供がいなくて、夫は既に死亡しています。
親も死亡しているため、法定相続人は兄弟姉妹になります。
長女は遺言書で自分の妹の次女に公正証書遺言書で土地を相続させるとありました。
今回既に相続登記を次女は済ませています。

次女が土地を第三者へ売却するという話がありそうです。

その際、次女と長男は兄弟ですが、
土地はずっと使用貸借なので、長男は次女へ明け渡す必要があることは理解しています。
建物の解体費用は、建物所有者の長男が負担すべきものなのでしょうか?

私は長男側からの質問で、長女は昔は長男へ土地をくれるとは言っていたけど、
ふたを開けてみると公正証書遺言書で次女とありました。
なんとか建物の解体費用を次女にもってもらうことは不可能でしょうか?
買取りとしても価値はS44年築で面積66.01㎡、固定資産税評価額658,449円で
とても家屋に価値があるとも思えない状況ではあります。

現状、土地ももらえずに建物の解体費用の捻出ということになりそうな感じですが、
打開策はあるものでしょうか?

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問と回答の結論

>建物は先代の相続発生前に長男が自分でS44年に建物を建築し、第三者に賃貸していまし
>た。
>現状は、古すぎて空き家です。
>土地の権利関係は使用貸借です。
>長女には子供がいなくて、夫は既に死亡しています。
>親も死亡しているため、法定相続人は兄弟姉妹になります。
>長女は遺言書で自分の妹の次女に公正証書遺言書で土地を相続させるとありました。
>今回既に相続登記を次女は済ませています。
>土地はずっと使用貸借なので、長男は次女へ明け渡す必要があることは理解しています。
>建物の解体費用は、建物所有者の長男が負担すべきものなのでしょうか?
>なんとか建物の解体費用を次女にもってもらうことは不可能でしょうか?
>現状、土地ももらえずに建物の解体費用の捻出ということになりそうな感じですが、
>打開策はあるものでしょうか?

法的な結論としては、
先生のお察しのとおり、解体費用を
次女に負担してもらうことは難しいでしょう。
裁判などになれば、長男がその費用で解体をして、
土地を明け渡す義務があるとされるでしょう。

方法としては、回答の理由にも記載した方法等で、
少しでも負担してもらえるように
交渉するということになるかと思います。

2 回答の理由

まず、今回のケースでは、
使用貸借の契約期間が定められていない
ことと思います。また、建物を建築し、
長年経過していることからすると、
建物の利用が使用収益の目的となっていること
とでしょう。

そうすると、使用貸借が終了する原因は、

①契約目的に従った使用収益の終了
または
②使用収益に足りる相当の期間の経過後の貸主からの解除

となると考えられます。

今回のケースでは、現状空き家であることや
建物建築の経過期間からすると、
少なくとも②は認められてしまうでしょう。

また、使用貸借が終了すると、
原則として、賃借人は原状回復義務を負いますので、
自らの費用で解体をしなくてはなりません。
(なお、付属物の撤去に過分な費用が
かかる場合には原状回復義務を負わないという
こともありますが、今回のような
建物所有目的の使用貸借ではそのようには
解されていません。)

仮に費用を負担してもらう
という前提ですと、

>次女が土地を第三者へ売却するという話がありそうです。
ということですので、

すぐに解体することは難しいことや、

主張する分には、上記建物の建築価格等に応じて、
まだ使用収益に足りる期間は経過してないことや
過分な費用が生じるから原状回復義務はない等
主張して、一部でも負担してもらうように
交渉するということになるでしょう。

現実的なところでいうと、
次女としては、土地を売却するには、
撤去した前提の方が、当然高値で売れる
でしょうから、すぐに撤去はできない旨
伝えて、一部でも負担してくれないかという
話で交渉していくという形が良いのでは
ないかと思います。

よろしくお願い申し上げます。