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市民税の特別徴収の納税義務者用決定通知書の開封とプライバシー

永吉先生

いつもお世話になりありがとうございます。
●●と申します。

少し変な質問かもしれませんが、
市民税の特別徴収税額の「納税者用通知書」
について質問を致します。

この時期(5月)は会社の従業員の給与から
徴収する市民税の特別徴収の通知書が各従業員にて
居住している各市町村から通知されます。

この通知書に記載されている市民税の金額を確認し、
6月分の各人の給与から市民税を徴収し、各市町村
に納付をしています。

(質問の内容)
○ この決定通知書は従業員ごとに毎月徴収する市民税の
金額が記載された明細書(A3サイズ)と、特別徴収税額の
計算の根拠となる、従業員の所得の内訳や所得控除の内容を
記載した明細書(A3サイズを細分化したサイズ)が市町村
より郵送されてきます。

A3サイズの明細書は会社用、A3サイズの細分化された
市民税の計算明細書は納税者(従業員)用として郵送されます。

○ 最近、細分化された従業員に配布する明細書の一部(住民税を
計算する所得や所得控除などが記載された部分)に保護シール
が貼られており、本人がペリペリと剥がして確認をする形式に
変更している市町村がかなり増えてきました。

以前は保護シールなどはなく、記載内容は普通に確認できていた。

(質問)
○ 会社としては、市民税の金額が適正に、会社が支給した前年の給与総額と
一致しているかを確認したいという理由、また2カ所給与など、副業
にて収入を得ていないかなどの確認をしたい理由などから、記載されている
所得や所得控除の内容を確認したいと思っています。

○ 本人から承諾を得られれば問題はありませんが、会社(市民税の
特別徴収義務者)が勝手に保護シールを剥がし、所得や所得控除の
内容を確認することは、個人情報やプライバシーの問題から
やってはいけない事になるのでしょうか。

○ 市民税額から逆算すれば、ある程度、通知されている市民税が
適正かどうかは把握できますが、通知されている金額を確認できれば
余計な検証作業が必要なくなります。

やはり、本人の了承が必要となるのでしょうか。

保護シールには、以下の印字がされています。
【事業主の皆様へ】
シールを剥がさずに従業員の方にお渡しくださいますようお願いします。

宜しくお願い致します。

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問

>この時期(5月)は会社の従業員の給与から
>徴収する市民税の特別徴収の通知書が各従業員にて
>居住している各市町村から通知されます。

>本人から承諾を得られれば問題はありませんが、会社(市民税の
>特別徴収義務者)が勝手に保護シールを剥がし、所得や所得控除の
>内容を確認することは、個人情報やプライバシーの問題から
>やってはいけない事になるのでしょうか。

2 回答

自治体によって、圧着式や保護シール式等の秘匿措置を施したうえで、
事業者に対し、従業員に直接渡すことを求めるケースが増えていますね。

この場合、納税者用の通知書は、市町村から従業員自体に対する
ものとなり、法的には、「信書」に該当することになります。

このような信書を「正当な理由」なく、
開封する行為(圧着式等により封がされている
ものを剥がす行為も同様の評価を受けるという解釈が一般的です。)は、
信書開封罪(刑法133条)に該当する行為となってしまいます。

この罪は、親告罪で、従業員の告訴がなければ、
刑事裁判になることもありませんし、実態としてはそれで
警察が動くとまではあまり考えられませんが。

では、「正当な理由」とはどのような場合かというと、
法令上認められる場合や権利者の承諾(推定的承諾を含む)が
ある場合をいうとされています。

ですので、原則的には、
>やはり、本人の了承が必要
となると考えられますし、

>会社としては、市民税の金額が適正に、会社が支給した前年の給与総額と
>一致しているかを確認したいという理由、また2カ所給与など、副業
>にて収入を得ていないかなどの確認をしたい理由などから、記載されている
>所得や所得控除の内容を確認したいと思っています。

このような理由が「正当な理由」となるとは、
考え難いところです。

実務的な対応として、どうしても開封したいという
ことですと、

上記のように推定的承諾を含む形で、「正当な理由」が
認められていますので、

雇用契約書に承諾する旨の記載を入れておくことや
就業規則等に会社が「納税者用通知書」を
開封することができることの規定などを整備した上、
従業員に対して、周知徹底しておくという方法が考えられます。

よろしくお願い申し上げます。