私募債の繰上償還について教えてください。
私募債を発行している会社のオーナーが、資金需要があるので、
会社から私募債の返済を受けたいと思っています。こちらですが、
どのような手続きが必要でしょうか。
会社法見る限り、償還の定めが見つからないので、社債権者で決議すれば
できると思うのですが。
ご質問ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問
>私募債の繰上償還について教えてください。
>私募債を発行している会社のオーナーが、資金需要があるので、
>会社から私募債の返済を受けたいと思っています。こちらですが、
>どのような手続きが必要でしょうか。
>会社法見る限り、償還の定めが見つからないので、社債権者で決議すれば
>できると思うのですが。
2 回答
社債(私募債)の償還期限は、
社債募集の際に定められ(会社法676条4号)、
発行会社と社債権者との社債契約の内容と
なっています。
今回は、社債契約に定める償還期限が到来する前に、
社債権者側から、発行会社に償還を
求めたいということだと思います。
社債契約上の償還期限は未到来であり、
このままでは社債権者から償還を求めることは
できないため、社債契約を変更して、
償還期限を前倒しする必要があるでしょう。
>会社法見る限り、償還の定めが見つからないので、社債権者で決議すれば
>できると思うのですが。
社債契約の変更に関する手続きは、
会社法上、明確に定められていませんが、
方法としては、
①社債権者集会の決議
または
②すべての社債権権者の同意
があると解されています。
(1)①社債権者集会の決議による方法
社債契約(社債の権利内容)の変更は、
「社債権者の利害に関する事項」(会社法716条)として、
社債権者集会で決議することができると考えられています。
社債権者集会で決議された事項は、
裁判所の認可を受けなければ効力を生じないため(会社法734条1項)、
社債権者集会で決議した後は、
裁判所に認可を求める必要があります。
裁判所の認可を得られれば、決議は有効となり、
(決議をした種類の)社債権者全員に対して
その効力を生じ(会社法734条2項)、
社債権者全員を拘束することになります。
(2)②すべての社債権者の同意による方法
全社債権者の同意があれば、
裁判所の認可手続きをすることなく、
①と同様の効果を得ることが可能です。
(3)その他について
ただ、上記①または②の方法であったとしても、
社債契約の内容変更には、契約である以上、
別途、発行会社の同意を得る必要があると考えられます。
この点については、明確に記載した文献もないのですが、
契約の一般原則からして、社債契約変更には、
契約の他方当事者である発行会社の同意も
必要と考えられるからです。
会社のオーナーとのことなので、おそらく、
この点については、当然得られることが前提
のようにも思いましたが、
仮に、●●先生のご質問の趣旨が、
発行会社の意向にかかわらず、債権者集会の決議で
一方的に、社債の償還期限を前倒しできるか、
ということだとすると、これは難しいと思います。
よろしくお願い申し上げます。