その他

持続化給付金の要件該当と不正受給の判断

永吉先生

税理士の●●です。
よろしくおねがいいたします。

不正受給についてどのように判断するのか不明なので教えて下さい。
売上の計上基準は発生主義という前提です。

1)受給要件にあてはまってしまった
→「新型コロナウイルス感染症拡大の影響等により、」という要件がありますが、この影響があったのかどうかはどのように証明するのでしょうか。
→例えば影響等をとくに受けている自覚がない建築業者が前年同月に建物の引渡を行ったため大きな売上があるが、当月対応月にはないことで計算をすると該当した場合はどう判断しますでしょうか。

2)受給要件にあてはまるようにした
→一人親方で自身がコロナの影響が特にないと思っているにも関わらず、当月対応月に受給要件に該当することを意図して、仕事を休んだ場合はどう判断しますでしょうか。
→従来の売上計上基準が引渡である場合、わざと引渡日を延期して売上が翌月にまわったことから、当月対応月が該当する場合はどうでしょうか。
→もっと積極的に、顧客と話をしてお互いに合意して引渡日を翌月に延期して要件に該当した場合はいかがでしょうか。

また、とくに2を積極的にやった、ということをもし告白された場合、それでも帳簿には売上が生じていなかったり、従来どおりに引渡基準で帳簿に売上を計上せざるを得ないのではないか、と思うのですが、そうすることで税理士に不正受給の責任が生じますでしょうか?

よろしくおねがいいたします。

●●先生

ご質問ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

ご質問の前提として、
先生のおっしゃっている「不正受給」というのは、

持続化給付金給付規程における「不正受給」(以下の給付条項第7条5号)ではなく、
給付要件を満たすか否かという趣旨かと思いましたので、
それを前提に回答します。
https://www.meti.go.jp/covid-19/pdf/kyufukitei_chusho.pdf

なお、給付規程によると、
○給付要件を満たさない場合
→贈与契約の解除による給付金の返還請求(規程10条1項2号)
○不正受給に該当する場合
→給付金の返還に加え3%の遅延金、2割加算、法人名等の公表、刑事告発(規程10条2項)
の措置がされることとなります。

1 ご質問①〜売上基準があてはまってしまった場合~

>「新型コロナウイルス感染症拡大の影響等により、」という要件がありますが、この影響が
>あったのかどうかはどのように証明するのでしょうか。
>→例えば影響等をとくに受けている自覚がない建築業者が前年同月に建物の引渡を行った
>ため大きな売上があるが、当月対応月にはないことで計算をすると該当した場合はどう判
>断しますでしょうか。

持続化給付金の給付要件は、ご指摘のとおり、
給付規程に定めるところ、
「新型コロナウイルス感染症拡大の影響等により」
「ひと月の売り上げが前年同月比で50%以上減少している」こと
(規程4条3号)です。

ご質問の証明についてですが、
年間の全体の売上状況の推移比較や申請時点でまだ
売上げに計上されていない受注している工事がどれだけあるのか
等から判断することになると思います。
(証明を別にして、上記ご質問は、コロナウィルスの
影響ではないことが前提だとは思いますので、法的には、
給付要件を満たさないことにはなるでしょう。)

現実論としては、実際に売上げが下がっている以上は、
行政としては、そのまま放置するということもあるもの
とは思います。

実際には、全てを調査することは
できないように思いますし、
虚偽情報(帳簿の操作等)による申請が、
まずは問題とされることとなるでしょう。

このあたりは、政治的な問題も相まって、
どこまでやるのかというところかと思います。

2 ご質問②〜売上基準をにあてはまるようにした場合~

>→一人親方で自身がコロナの影響が特にないと思っているにも関わらず、当月対応月に受
>給要件に該当することを意図して、仕事を休んだ場合はどう判断しますでしょうか。
>→従来の売上計上基準が引渡である場合、わざと引渡日を延期して売上が翌月にまわった
>ことから、当月対応月が該当する場合はどうでしょうか。
>→もっと積極的に、顧客と話をしてお互いに合意して引渡日を翌月に延期して要件に該当
>した場合はいかがでしょうか。

(1)仕事を休んだ場合

>→一人親方で自身がコロナの影響が特にないと思っているにも関わらず、当月対応月に受
>給要件に該当することを意図して、仕事を休んだ場合はどう判断しますでしょうか。

証明レベルの話をすると、
こちらについても、意図が証明できるのかという問題があります。

健康上の理由(感染リスクを減らす)からこの期間は、
仕事を休むという判断もあるわけなので、一概に「コロナウィルスの影響」
ではないという証明は難しいように思います。

厳密には、休んだ時期(緊急事態宣言中等)やどの時期から
休まなくなったかという判断をしていくことになるでしょう。

ただし、
繰り返しになりますが、最終的な結果は、
政治的な要素を多分に含む形となり、

実際には、金額などの影響も受けると思いますが
返還請求等を受ける可能性自体は相対的に低いとは思います。

(2)引渡をずらす等の場合

>→従来の売上計上基準が引渡である場合、わざと引渡日を延期して売上が翌月にまわった
>ことから、当月対応月が該当する場合はどうでしょうか。
>→もっと積極的に、顧客と話をしてお互いに合意して引渡日を翌月に延期して要件に該当
>した場合はいかがでしょうか。

法的には、本来は引渡しが可能で、計上されるはずの
売り上げをずらしているのですから、
コロナウィルスの影響による減少ではないとされるでしょう。

証明としても、質問①からも分かる通り、
翌月に売上げが担保され、
引き渡し時期をあえてズラしているということですと
「コロナウィルスの影響による減少ではない」と
証明しやすいでしょう。

なお、実際に問題になるかは、上記の政治的な問題が
あります。

3 ご質問③〜税理士の責任について〜

>とくに2を積極的にやった、ということをもし告白された場合、それでも帳簿には売上が
>生じていなかったり、従来どおりに引渡基準で帳簿に売上を計上せざるを得ないのではない
>か、と思うのですが、そうすることで税理士に不正受給の責任が生じますでしょうか?

そもそも、帳簿上の月の売上基準と
「コロナウィルスの影響による売上の減少」と言えるかは、全く別の問題です。

税理士の先生が積極的に不正受給のために引き渡しをズラす等の
アドバイスをすれば、当然問題がありますが、

帳簿を引渡基準で作成すること自体に責任が問われる
ことはありません(むしろ、基準を変えることの方が問題です)。

なお、
税理士の先生のお立場としては、
売上基準を満たす満たさないのアドバイスはあると
思いますが、それがコロナウィルスの影響か否かや申請をするか否かは、
申請者に任せるということになるでしょう。
(税理士が代理申請や専門家の確認等もあるわけではないので)

ただ、先ほど入った情報で、詳細はわかっていないのですが、
税理士による代理申請(?)が可能になるというような話も
あるようなので、今後代理申請をするというケースでは、
給付要件の確認についても責任が生じるようにも思えます。
(詳細が分からないので現状ではなんとも言えません。)

不正受給が疑われるケースでは受任しないことや
必要があれば、説明に虚偽がないことや「コロナウィルスの影響等によること」
であることの確認書等をもらう措置でリスクの低減を図る対策も有効かと思います。

よろしくお願い申し上げます。

●●です。
関連するところで再確認させてください。

コロナの影響を受けたか受けていないかは主観で判断をするのでしょうか?

下記、知恵袋でも自分的にはコロナの影響はないと思っている人は、
コロナの影響を受けていないため、基本的には受給できないということでしょうか?

●●先生の質問でも建築業者が前年同月に建物の引渡を行ったため大きな売上があったためなど、
建設会社や外車や船の高額商品の販売会社であれば、売上がでこぼこしているような会社だと
判断が付きにくく、売上高がたまたま大きい月はありそうな気はします。

https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q11224576166

下記のブログでも年月は誤っていそうですが、売り上げがある月、少ない月と
ばらつきがあった場合は、50%以上減少に該当しやすくなるかと思います。

売上減少理由
「2020年1月以降、新型コロナウイルス感染症拡大の影響等により、前年同月比で事業収入が50%以上減少した月」との一文があります。
減少の理由がコロナの影響か否かは、証明するのが難しく客観的事実を見せるのが出来ない場合もあるかと思います。
単発での案件でやっているフリーランスなどは、前年対比で売上が発生しない月と発生する月がたまたまあるとします。
つまり、もともとコロナによらず売上が分散していると、単月で見ればすぐさま対象となるわけですが、
これを「これまでそのような傾向があったから無効」とするのかは不明です。
こういった場合は、「月あたりの事業収入の変動が大きい」と言う事で通常の算定式ではなく、
特例として少なくとも2020年の任意の1ヵ月を含む連続した3ヶ月(以下「対象期間」という。)の事業収入の合計が、
前年同期間の3ヵ月(以下「基準期間」という。)の事業収入の合計と比べて50%以上減少している場合となるそうです。
よって、売上に上下がある場合、この連続した3か月で前年対比50%売上が減少しているか見る必要があります。
さらに2012年中の連続する3か月となっている為、遅い場合でも2012年10月~12月分の売上が期限となります(別表二)。

持続化給付金のすすめ

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問

>コロナの影響を受けたか受けていないかは主観で判断をするのでしょうか?
>下記、知恵袋でも自分的にはコロナの影響はないと思っている人は、
>コロナの影響を受けていないため、基本的には受給できないということでしょうか?

2 回答

「新型コロナウイルス感染症拡大の影響」等により
というのは、中小法人等向けの給付規程を例に
とると、第4条3号になります。
https://www.meti.go.jp/covid-19/pdf/kyufukitei_chusho.pdf

「により」というのは、法的には因果関係を意味する文言であり、
客観的な状況から売上げに影響があったか否かで判断されます。
(もちろん、主観的な事情も客観的事情を推認する事情(間接事実)
になりえますが、申請をするとなれば、影響があったと思って
いたと主張することになるでしょうから、あまり関係ありません。)

●●先生のご質問でいうところの
>年間の全体の売上状況の推移比較や申請時点でまだ
>売上げに計上されていない受注している工事がどれだけあるのか
>等から判断することになると思います。
は、このようなことを想定しています。

なお、少なくとも先生があげられるURLに記載のある3ヶ月の特例は、
コロナウィルスの影響等といえるのかというところとは、
関係がない話かと思います。

コロナウィルスの影響等による給付要件(給付対象者要件
といった方が厳密かもしれません。)を満たしている
ことを前提として、通常の給付額の計算方法では、
給付額が少なくなる、または0となることを防ぐための特例
(規定11条3校2号→別表)です。
対象URLの記載は規定を読み違えているのだと思います。

現実的な話をすると、影響がわかりにくいというケースの場合、
仮に、後にコロナウィルスの影響等ではないとされたとしても、
(そこまで国が動くとは、現状では正直思えませんが。)

受け取った給付金を返還する(贈与契約の解除による返還請求)
のみ(規定10条1項2号)ですので、申請はしておき、
給付金はもらっておくという判断はありかと思います。
この辺りは、それぞれの価値観もあるでしょうが(影響を受けて
いなそうなのに税金を原資とする給付金をもらうのは・・・
という考えもあるかと思います。)。

ただし、規定7条の「不正受給」に該当する場合には、
3%延滞金、2割加算、公表、刑事告発措置等があります
(規定10条2項)ので、注意が必要です。

よろしくお願い申し上げます。