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従業員退職金の金額計算と、勤続年数、帰属時期について

永吉先生

お世話になっております。
●●です。

掲題の件、教えてください。

(前提条件)
・本年6月に法人の幹部従業員(役員ではない)が退職します
・この幹部従業員に対しては、平成27年10月に退職の意向があったが、法人側の事情により退職時期を延期しました(法人、従業員間で書面による合意済み)
・またその際に、その時点(平成27年10月)における勤続年数で退職金の金額計算を行い、実際の退職時にその金額を払う旨について、法人と従業員は書面により合意しています
・その法人に退職金規程はありませんが、従来より直前期平均給与月額×勤続年数で計算しています

(質問事項)
今般この従業員が退職することになりましたが、次の認識で問題はありませんでしょうか
・金額は平成27年10月に合意した金額を払いますが、もし追加の勤続期間分について退職金の追加支払いを請求されても、支払う必要はない
・退職金の源泉徴収等にあたり、勤続年数は令和2年6月まで、退職所得の帰属時期は令和2年である

よろしくお願いいたします。

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問①〜実際の勤続年数による計算は必要か

>今般この従業員が退職することになりましたが、次の認識で問題はありませんでしょうか
>・金額は平成27年10月に合意した金額を払いますが、もし追加の勤続期間分について退職金
>の追加支払いを請求されても、支払う必要はない

この部分は、非常に難しいところになりますが、
形式的には、「退職時に、退職金として、金○○万円を支払う」
との合意があるのであれば、先生のご認識のとおりです。

ただ、
>その法人に退職金規程はありませんが、従来より直前期平均給与月額×勤続年数で計算してい
>ます

ということで、

この合意をした際には、その時点における勤続年数を前提に
計算した結果を合意しただけで、法人都合で退職しなかったという事情などから、
勤務を続けるということであれば、その趣旨は、実際に勤務した年数
を基準に再計算するというものであったと判断される可能性は比較的残ります。

明確に、それ以上の退職金は支払わない旨の記載があるのであれば、
良いのですが、争いになれば、その他の証拠や経緯などから、
どういう趣旨の合意であったのかを裁判で白黒つけざるを得ないところかと思います。

ただ、現時点では、支払わなくても良いと判断される可能性のある
グレーな部分ですので、法人の意向で追加は払わないということでしたら、

とりあえず、合意書の内容で支払いをして、
従業員の出方を見るということになるかなとは思います。

2 ご質問②〜退職所得の帰属時期

>今般この従業員が退職することになりましたが、次の認識で問題はありませんでしょうか
>退職金の源泉徴収等にあたり、勤続年数は令和2年6月まで、退職所得の帰属時期は令和2年
>である

上記の合意の解釈の問題にもなりそうですが、

仮に合意内容どおりの金額であったとしても、
退職の事実を前提に支払われる金額であることに
変わりはないと思いますので、
そのように考えていただいて問題はないでしょう。

よろしくお願い申し上げます。