会社法 労働法

従業員が取引先の代表者となる場合の注意点

永吉先生

お世話になっております。●●です

法人A(従業員10人未満の同族会社。株主は社長1名)の従業員B(A社の役員ではありません)が法人Aと同種の法人Cを立ち上げ代表取締役に就任し、経済活動をすでに行っています。

BはA社の従業員として今後も働きますし(A社から高額な給与を得ています)C社の代表取締役としても活動します
新しく会社を立ち上げたことは、A社の社長も承認しております

現在はA社とC社の取引はないのですが、もしA社とC社が取引を行うことになった場合
何か法的(税務的にももしあれば)気を付けなければいけない点ありますでしょうか?

水産物の仲卸で、かなり大きな額が動くことが予想されます
もちろん、第三者と取引するような価格で商売しますので、特別有利不利な取引条件とはしません。

漠然とした質問ですいませんが、よろしくお願い申し上げます。

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問と回答の結論

>法人A(従業員10人未満の同族会社。株主は社長1名)の従業員B(A社の役員ではあり
>ません)が法人Aと同種の法人Cを立ち上げ代表取締役に就任し、経済活動をすでに行って
>います。

>BはA社の従業員として今後も働きますし(A社から高額な給与を得ています)C社の代表
>取締役としても活動します
>新しく会社を立ち上げたことは、A社の社長も承認しております

>現在はA社とC社の取引はないのですが、もしA社とC社が取引を行うことになった場合
>何か法的(税務的にももしあれば)気を付けなければいけない点ありますでしょうか?

結論として、
今回のケースであれば、
従業員Bが代表を務める法人Cと法人Aが
取引をすること自体には問題はないでしょう。

2 回答の理由

法人A について、法的なリスクとして、
あり得る問題としては、
従業員Bの法人Cの業務は実質的には、
法人A の従業員としての業務であり、労働法の
潜脱をしているとの指摘はあり得るのかもしれません。
(税務上でいうところの法人を形式的に媒介させるのみで、
実態としては、給与所得になる等の議論に近いです。
Bが法人を設立している時点で実務上は極めて難しい
認定ですが。)

ただ、今回のケースでは、
・法人Cは既に独立の経済活動を行っていること
・>水産物の仲卸で、かなり大きな額が動くことが予想されます
・>もちろん、第三者と取引するような価格で商売しますので、特別有利不利な取引条件とは
>しません。

ということからすると、特に問題ないでしょう。

また、法人Aが同業種と取引すること自体も、
>もちろん、第三者と取引するような価格で商売しますので、特別有利不利な取引条件とは
>しません。
ということですし、そもそも法人Aの株主が社長1名ですので、
法人A の社長に対する役員の責任追及を考慮する必要はないでしょう。

その他、注意点としては、
Bのリスクとして、法人Aの従業員の立場(業務等)で
自己の法人Cの利益を図るために、法人Aを害するような行為を
行えば、法人Aから損害賠償請求をされるということは
理論上は、考えられるかなとは思います。

いずれにしても、法人Aの従業員としての業務内容と
法人C の代表取締役としての業務は、できる限り、
峻別できる形で運営していくことが良いかと思います。

よろしくお願い申し上げます。