相続 会社法 相続税

役員貸付金が残ったまま会社を閉鎖した場合の相続の処理

弁護士法人ピクト法律事務所
代表弁護士 永吉 啓一郎様

いつもお世話になっております。
ご質問がありますので、ご回答をお願い致します。

質問
会社の資金を社長が借金し、返さずに死亡し、会社も閉鎖した場合の相続の処理はどのように行えば良いのでしょうか。
ご教授くださいませ。

以上、よろしくお願い致します。

●●先生

お世話になっております。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問

>会社の資金を社長が借金し、返さずに死亡し、会社も閉鎖した場合の相続の処理はどのよう
>に行えば良いのでしょうか。ご教授くださいませ。

2 回答

>会社の資金を社長が借金し、返さずに死亡し、会社も閉鎖した場合
とのことですので、

① 会社の事業を事実上停止した
② 解散決議を経て、会社自体は清算中
③ 清算手続結了登記まで済んでいる

の3つが考えられるかと思いますので、
それぞれ回答します(おそらく③かとは思いましたが)。

(1)①、②の場合

①、②の場合は、通常の状態か清算中の状態かに
違いがありますが、会社は債権を有している状態です。

したがって、各相続人が、相続分に応じて、
債務を負うことになります。

(2)③の場合

③の場合には、形式上は、清算結了がなされて
法人格が消滅しているように見えます。

しかし、法的には、
仮に会社が債権放棄をすることなく債権が残って
いた場合には、清算結了をして登記していたとしても、
法人格は消滅していない(実際には、
清算手続きが結了していない)ということになります。

つまり、
通常清算において、清算人は、
会社の残余財産を債権者や株主に対して配
当しなければならないとされ、

清算人が、会社の被相続人に対する貸金債権について、
何らの措置も講じないまま、清算手続を終了させた場合、
外形上は清算手続が終了したように見えても、
実質的には終了しません。

そして、法的な整理では、
清算事務が実質的に終了していない場合、
形式上で清算手続が結了し、会社の清算結了の登記がされても、
会社の法人格(法的な権利や義務の主体となる地位)は
残り続けると解されています。

したがって、このようなケースでは、
(1)と同様に、③の場合も、相続分にしたがって
相続人が債務を負っている状態となります。

法的には、上記のとおりですが、

実務上は、そのまま関係者が誰も何もいってこないという
ケースであれば、そのまま放置されることもままあります。
(相続税申告で債務控除にするとすると矛盾が生じますが。)。

よろしくお願い申し上げます。