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MS法人への業務委託契約の契約書と派遣法等について

永吉先生

いつも大変お世話になっております。
税理士の●●です。

医療法人がMS法人と業務委託契約を締結するときの契約書について
受付業務等を請け負う形になり、MS法人の従業員を医療法人で
業務に従事させますが、この際に、派遣業務ととられないように
するための契約書の書き方、入れておくべき条項等を教えていただきたいです。

よろしくお願いいたします。

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問

>医療法人がMS法人と業務委託契約を締結するときの契約書について
>受付業務等を請け負う形になり、MS法人の従業員を医療法人で
>業務に従事させますが、この際に、派遣業務ととられないように
>するための契約書の書き方、入れておくべき条項等を教えていただきたいです。

2 回答

MS法人と医療法人の契約が業務委託なのか、
労働者派遣なのかの区別は、
MS法人と雇用契約をしている従業員が、
「医療法人からの指揮命令を受けているのか」という点
になります。

弊社の弁護士が書いた以下の記事のSES契約と派遣の違いの
図と論理的には一緒ですので、ご参照ください。
https://ec-houmu.com/roumu/haken

また、以下の記事に区別のポイントについて書かいています。
https://ec-houmu.com/other/gyomuitakukeiyaku-houmutaisaku

契約書の記載としては、
「医療法人は、MS法人の従業員等に対して、指揮命令する
権限はなく、要望・要請等に関しては、MS法人が定めるMS法人の管理責任者
にすることとする。」
「MS法人は、作業に必要な設備・備品等については、
自らの支出により準備することととする。」
等になります。

ただし、契約書の記載も一応の考慮事項にはなりますが、

派遣に当たるか否かは、結局、上記記事でも記載の
あるとおり、実態からの評価になります(いわゆる偽装請負の問題です)。
実態にあっていない契約書を作成したとしても、
それで問題がなくなるわけではありません。

なお、MS法人の場合は、実質的な支配関係が同一の者が、
一つの医療法人と業務委託契約を締結するケースが
多いかと思います。

MS法人が複数の医療法人と契約をする場合は
別として、このようなケースでは、
・本店所在地について、同一
・実質的な指揮命令者について、同一

ということも多く、法理論は別としても、
その業務自体がMS法人の場所で行われている
との評価や指揮命令もMS法人の命令権を行使した
に過ぎないとも評価しうることから、
特段、派遣の問題は生じにくいところかとは思います。

また、一医療法人に対してのみでも、法論理的には、
「業として」とされるおそれがありますが、
実務上は、一医療法人に対してのみであれば、
特段問題視されないことということもあります。

その他、従業員に不利益がないような形であれば
(通常、このケースではそうだと思います。)
問題が顕在化するケースはあまり想定できないかと
思います。

ただ、勤怠管理ソフトの名義等も含めて、
MS法人の従業員の管理・指示等については、MS法人が
行っている形式を整えておくことは重要かと思います。

よろしくお願い申し上げます。