●●と申します。宜しくお願いします。
前提
顧問先の営業社員退職に当たり、
顧客の略奪防止事項や、
同業への転職2年間の禁止、
情報漏洩の禁止、 誹謗中傷しない、
万一禁止行為あった場合の損害賠償などなど。
良くある即決和解合意のための書類を作成説明したものの、
本人からは、不利な面など計り知れないので、
署名はお断りします。
と言われ、署名に拒否されたそうです。
こうなると逆に顧客略奪など、やる前提にもなってしまいます。
色々言っても、逆にどんどん険悪になって行くだけです。
質問
このような即決和解書面の署名を拒否された場合、方法は無く、諦めるしかないのでしょうか?
または、それならと、別な形で情報漏洩や、顧客略奪リスク事前防止対応する交渉方法はあるのでしょうか?
宜しくお願いします。
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問
>顧問先の営業社員退職に当たり、顧客の略奪防止事項や、同業への転職2年間の禁止、
>情報漏洩の禁止、誹謗中傷しない、万一禁止行為あった場合の損害賠償、などなど。
>良くある即決和解合意のための書類を作成説明したものの、
>本人からは、不利な面など計り知れないので、署名はお断りします。
>と言われ、署名に拒否されたそうです。
>このような即決和解書面の署名を拒否された場合、方法は無く、諦めるしかないのでしょう
>か?
>または、それならと、別な形で情報漏洩や、顧客略奪リスク事前防止対応する交渉方法はあ
>るのでしょうか?
2 回答
(1)書面への署名・押印義務等について
ご指摘のとおり、
退職する社員には、書面に署名・押印する義務はありません。
仮に交渉でということであれば、例えば、退職金等を支払う
代わり署名・押印をもらうということもあり得るかもしれません。
つまり、メリットを提示して締結するという方法です。
ただし、就業規則(従業員への周知等法律上の有効要件を満たしていることが前提)で、
・退職後に顧客への営業行為や同業の行為を禁止する条項(競業避止条項)
・退職後においても、在職中に知り得た秘密を開示・漏洩することを禁止する条項(秘密保持条項)
を定めているケースもあり得ます。
この場合には、退職する社員には、
就業規則に従った契約に基づき、
これらを行わない義務が既に発生していますので、
再度、書面を取り交わす必要性は下がります。
退職時には、特に問題となりそうなケースほど、
書面で締結できる可能性が低いので事前に対策
しておくことが重要です。
なお、仮に書面を締結(就業規則含む)したとしても、
競業避止条項などについては、労働者の職業選択の自由との関係で、
個別事情により、合理的な範囲、期間の制限、代償措置を
取らない場合等には、無効となるリスクが高いものです。
(2)書面(就業規則含む)の締結なく退職した場合には何も請求することができないのか?
仮に書面(就業規則含む)による締結がない場合にも、
すべての行為が許されるわけではありません。
この辺りは、事実認定と評価の問題となりますので、
一般論としてはなんとも言えませんが、
情報管理実態やその従業員の地位等から、
情報の窃取・利用や引抜き行為等が不正競争防止法違反となったり、
民法上の不法行為責任を負うケースもあります。
また、「誹謗中傷しない」等であれば、行為内容によっては、
名誉毀損や営業妨害等にあたり、損害賠償等を
請求できる場合もあります。
ただし、労働者が守られやすい領域ですので、
就業規則等により事前に対策をしておくことが重要です。
よろしくお願い申し上げます。