民法

契約書がない場合に合意があったことを主張できるかどうか

永吉先生

お世話になります。
一方的なお願いで恐縮ですが、本件、少々急いでおります。

研修事業を行っている会社が、クライアント候補から受託した(と認識していた)
研修に関し、口頭及びメールでの合意を得たうえで、半年間にわたり詳細な
打合わせをしておりました。その記録も会社はまとめております。

ここにきて、クライアント候補から研修のキャンセルの通知があり、あらかじめ
提示して承諾を得ていたキャンセル規定に従って、キャンセル料を請求しようと
したところ、クライアントから「契約書の締結がない限りはそもそも合意して
いない」と返され、揉めております。契約書締結が必要という話はクライアント
側からはなく、キャンセル料の請求の場面になって初めてそのような見解を
伝えてきました。

契約書がなくとも、上記のように、口頭・メールでの承諾があり、実際の
やりとりも多数重ねているような状況において、実質的に契約締結していると
主張することは可能でしょうか?また、参考となる判例等ございますでしょうか?

ご多忙かとは存じますが、よろしくお願いいたします。

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問

>クライアント候補から研修のキャンセルの通知があり、あらかじめ
>提示して承諾を得ていたキャンセル規定に従って、キャンセル料を請求しようと
>したところ、クライアントから「契約書の締結がない限りはそもそも合意して
>いない」と返され、揉めております。契約書締結が必要という話はクライアント
>側からはなく、キャンセル料の請求の場面になって初めてそのような見解を
>伝えてきました。

>契約書がなくとも、上記のように、口頭・メールでの承諾があり、実際の
>やりとりも多数重ねているような状況において、実質的に契約締結していると
>主張することは可能でしょうか?また、参考となる判例等ございますでしょうか?

2 回答

契約書はあくまでも合意の存在を証明するもので、
契約書がなければ契約が成立していないというものでは
ありません。

確かに、口頭のみですと先方が承諾していないと主張
されるということで、争いになりえますが、

先生ご指摘の
>メールでの承諾
及び
>あらかじめ提示して承諾を得ていたキャンセル規定

があることが確認できるのであれば、
合意が成立しているものとして、
キャンセル料の請求は可能でしょう。

>また、参考となる判例等ございますでしょうか?

明確に承諾している証拠がある前提であれば、むしろ
一般理論から当然の帰結のため判例等はない(そもそも争点に
ならないという意味で)と思います。
(その他の判例が当然の前提にしているという意味では、
ある意味、契約関係の判例のほとんどが参考となる判例に
なります。)

よろしくお願い申し上げます。