お世話になっております。
一定額以上の補助金を受領している学校法人は、その計算書類について、私立学校振興助成法14条3項に基づき公認会計士等による監査を受ける必要があります。
当該監査において公認会計士等が善管注意義務を払わずに粉飾等を見逃した場合は、例えば、会社法であれば、損害賠償責任や罰則が設けられていると理解しております。
一方、私立学校振興助成法においてはこのような責任や罰則に関する規定がないようなのですが、当該私立学校振興助成法の監査において、仮に会計士が適正な監査報告書を提出しなかった場合には、どのようなペナルティ(例えば、損賠賠償や罰金として、学校法人が受領した補助金の全部又は一部を会計士が国に支払う等?)が想定されるのでしょうか?
(書類の作成等)
第十四条 第四条第一項又は第九条に規定する補助金の交付を受ける学校法人は、文部科学大臣の定める基準に従い、会計処理を行い、貸借対照表、収支計算書その他の財務計算に関する書類を作成しなければならない。
2 前項に規定する学校法人は、同項の書類のほか、収支予算書を所轄庁に届け出なければならない。
3 前項の場合においては、第一項の書類については、所轄庁の指定する事項に関する公認会計士又は監査法人の監査報告書を添付しなければならない。ただし、補助金の額が寡少であつて、所轄庁の許可を受けたときは、この限りでない。
非常に変わった質問で大変恐縮ですが、ご教示いただけますと幸いです。
よろしくお願いいたします。
ご質問、あリがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問
>一定額以上の補助金を受領している学校法人は、その計算書類について、
>私立学校振興助成法14条3項に基づき公認会計士等による監査を受ける必要があります。
>当該監査において公認会計士等が善管注意義務を払わずに粉飾等を見逃した場合は、
>例えば、会社法であれば、損害賠償責任や罰則が設けられていると理解しております。
>一方、私立学校振興助成法においてはこのような責任や罰則に関する規定がないよう
>なのですが、
>当該私立学校振興助成法の監査において、仮に会計士が適正な監査報告書を提出しなかった
>場合には、
>どのようなペナルティ(例えば、損賠賠償や罰金として、学校法人が受領した補助金の全部
>又は一部を会計士が国に支払う等?)
>が想定されるのでしょうか?
2 回答
ご指摘のとおり、私立学校振興助成法自体には公認会計士又は
監査法人の責任や罰則を定めた規定はありませんが、
民事上の責任を負うことになります。
(1)国に対する民事上の責任
例えば、粉飾等による不正受給があった場合には、
理論上は、支給者である国から不法行為に基づく
損害賠償責任を追及されることがありえます。
実際には、国は学校法人に請求をすることに
なるかと思いますが、回収できるかはわからないため、
会計士の方にも、損害賠償請求をするということは
法理論上はあり得るところです。
仮にこの責任が認められると、
あとは、学校法人と会計士の間の内部負担割合
がどうなるのかというところになります。
法理論としては、
税理士の先生が粉飾をし、その決算書を
信じて金銭を貸し付けたり、保証人となった
者から不法行為による損害賠償請求をされる
ことがあるというのと同様の問題です。
(2)学校法人に対する民事上の責任
具体的な損害が生じたか、学校法人と会計士との
過失割合がどの程度かは個別事情によるかと
思いますが、会計士の先生の善管注意義務違反
として、粉飾の見逃しにより、学校法人に損害
がでれば、債務不履行に基づく、
損害賠償請求をされることはありえます。
不正に受給した金額については、
学校法人が国に返還すべき等になれば、その金額
については、学校法人が受け取れなかったもの
となりますので、損害とは言えないとは思います
(税理士の先生の過少申告事案で、本税分は納税者が
負担すべきであるという話と同様です。)が、
粉飾等を契機に、本来は受領できる部分(将来含む)
が、受領できなくなったというケースであれば、
責任を追及されることはあるでしょう。
(3)その他の責任
その他、行政上の責任として、
会計士の懲戒責任(公認会計士法29条、30条2項)
や課徴金納付命令(同法31条の2)などの責任を
負うということはあります。
よろしくお願い申し上げます。