清算 株式 会社法 法人税

みなし解散による清算中の法人の株式を取得し、その後合併することの可否

永吉先生

いつも大変お世話になっております。
表題の件について、ご教示頂ければ幸いです。
下記の取引についての相談です。

【前提条件】

<A社>
・甲が代表取締役の法人
・株主は甲50%・甲の配偶者50%
・B社からの借入金1億円が負債の部に計上されています

<B社>
・甲が代表取締役の法人
・甲が100%株主の法人
・平成27年にみなし解散登記がされていますが、登記簿は閉鎖されていません。
・A社に対する貸付金1億円が資産の部に計上されており、その他の資産はありません。
・負債は特に無く、資本金1,000万円、純資産1億円と推定します。
・10年以上前から法人税の税務申告をしていません。

【検討事項】
(1)A社は、B社の株式100%を対価1億円で甲から取得することは可能ですか。
(2)取得できた場合、AB社の合併(B社は合併により消滅)は可能ですか。
(3)上記(1)(2)が可能であれば、AB社間の債権債務は混同消滅する認識で正しいですか。
(4)混同消滅した場合であっても、B社の無申告期間について、期限後申告(A社への利息収入)
を行うとともに、A社は更正の請求(B社への支払利息)をする必要はありますか。
(5)登記簿が職権で閉鎖されていた場合、上記の取扱いで異なることはありますか。

以上です。
どうぞよろしくお願い申し上げます。

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問①〜清算中の会社の株式譲渡〜

>(1)A社は、B社の株式100%を対価1億円で
>甲から取得することは可能ですか。

はい。みなし解散となり、清算結了前の清算中の会社
であっても、法人格が消滅しているわけではなく
株式譲渡は禁止されませんので可能です。

ただし、A社とA社代表取締役甲の
直接取引(利益相反取引)に該当しますので、
A社の株主総会決議が必要です(取締役会設置会社
であれば、取締役会)。

2 ご質問②〜清算中の会社を消滅会社とする合併について

> (2)取得できた場合、AB社の合併(B社は合併により消滅)は可能ですか。

はい。
解散した株式会社は、当該解散後の株式会社が存続する内容の合併はできませんが、
解散した株式会社が消滅する内容の合併は可能です(会社法474条1号括弧書)。

3 ご質問③〜混同による消滅について

>(3)上記(1)(2)が可能であれば、AB社間の債権債務は混同消滅する認
>識で正しいですか。

はい。おっしゃる通りです(民法520条)

4 ご質問④〜B社の過去の無申告等との関係

>(4)混同消滅した場合であっても、B社の無申告期間について、期限後申告
>(A社への利息収入)
>を行うとともに、A社は更正の請求(B社への支払利息)をする必要は
>ありますか。

そうですね。
理論上は、合併及び混同によって、過去のB社の税務上の義務が消滅
するわけではないため、その義務も含めて、A社が引き継ぐことになります。

したがって、
理論上は、除斥期間(原則5年)が経過してない限りは、
そのような対応を行うことが正しいということになります。

5 ご質問⑤〜登記が閉鎖している場合

>(5)登記簿が職権で閉鎖されていた場合、上記の取扱いで異なることはあり
>ますか。

実体法上は上記と変わりませんが、

合併登記等が必要になるところ、
登記簿が閉鎖されている場合には、
当該会社の清算が結了していない旨の届け出をして、
登記記録を復活させる必要があります。
(商業登記法規則81条3項)

よろしくお願い申し上げます。