民法

交通事故の過失割合と交渉について

永吉先生

お世話になります。●●です

以下の案件ご教示ください。

前提

自転車運転手Aは西から東に向けて自転車運転の途中に前方から来た

自動車Bの左側をすり抜けようとしたところ、Aは自動車B左側の縁石に

少し乗り上げ、その拍子に運転を誤りBと正面衝突してしまう。そのままAは救急車で病院へ運ばれる。

A,B、警察官二人により、病院で聞き取りがあったようです。

なお、Bはそれほどスピードは出ていなく発進したての模様、

Aは自動車保険ではなく賠償責任保険のみ加入(保険会社の示談交渉なし、自分で交渉する)

Bの加入保険会社CはAがぶつかってきたのだからという理由でAの過失が100%であることを主張

質問

1、この場合の過失割合はどうなるでしょうか?

2、相手が自動車で、動いている状態で自転車側の過失100%はありえるのか?

3、今後AはCにどのような手段で過失割合を主張するべきか?

4、Aは人身事故扱いにして通院を希望していますが、人身事故扱いにしてAのデメリットはありますか?

5、逆にBがAに慰謝料を請求するようなケースは考えられますか?

6、Bが万が一通院など始めた場合、Aは対応の必要がでてきますか?

7、Aが人身事故を主張する場合、もう一度現場検証のようなものはありますか?

Aは精神的つかれておりそういうことは望んでいない様子

8、その他注意点があれば教えてください。

以上です。

よろしくお願いいたします。

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問①〜過失割合について
> 1、この場合の過失割合はどうなるでしょうか?

過失割合は、より詳細な事故状況や証拠の関係等によるので、
一般論となりますが、

>自転車運転手Aは西から東に向けて自転車運転の途中に前方から来た
>自動車Bの左側をすり抜けようとしたところ、Aは自動車B左側の縁石に
>少し乗り上げ、その拍子に運転を誤りBと正面衝突してしまう。

Aは道路の右側を通行しており、
互いに直進していたところを
正面衝突してしまった状況かと思われます。

互いに直進し、正面衝突の場合、一般的に過失割合は
【自転車:自動車 = 1:9】と考えられています。

なお、この割合は、双方走行中の原則であって、
自動車の側が自転車の走行を認識することは容易であり、
注意すれば事故を避けることができたという前提での
過失割合ですので、

>自動車Bの左側をすり抜けようとしたところ、
>Aは自動車B左側の縁石に少し乗り上げ、
>その拍子に運転を誤りBと正面衝突してしまう。

自動車側が事故を避けることが容易でない
として、自転車側の過失割合が増えることも考えられますし

>なお、Bはそれほどスピードは出ていなく発進したての模様、

この場合の実際のBのスピード如何によりますが、
停止中の車両に対して、Aが追突したのに似たような状況であり、
Bは、当該事故を避けることができない状況に近いと判断される
場合には、Aの過失割合が増えることも考えられます。

2 ご質問②〜自転車側の過失割合100%という保険会社の主張について
>2、相手が自動車で、動いている状態で自転車側の過失100%はありえるの
>か?

自動車側が完全に停止していない限り、
過失割合が0になることはまずないと思います。

3 ご質問③〜Aの過失割合に関する主張
> 3、今後AはCにどのような手段で過失割合を主張するべきか?

A側として、何かBの過失を主張するのであれば、
Bが走行中であったこと、及びその速度の主張が重要かと思います。

Aの過失が100%であるという保険会社Cの主張は、

停止中の車両に対する追突を前提としなければ、
なりたつものではないと考えられるからです。

4 ご質問④〜人身事故扱いのデメリットについて
>4、Aは人身事故扱いにして通院を希望していますが、人身事故扱いにしてA
>のデメリットはありますか?

人身事故として、被害届をだすこと自体は、
Aの権利として問題なく行うことができますが、
その場合、刑事事件性の判断のために、
実況見分が行われ、警察らの取り調べが行われる可能性があります。

Aとしては、実況見分調書などの公的な証拠も取得できる一方、

Aのデメリットとしては、
その記載が、Aに不利だった場合には、
B(C)の側の当該実況見分調書が、
過失相殺の主張を基礎付ける証拠になってしまう
可能性があるというところです。

ただ、一般論としては、通院が必要な状況であれば、
このデメリットはあまり気にはしないかと思います。

5 ご質問⑤〜Bからの慰謝料請求等
>5、逆にBがAに慰謝料を請求するようなケースは考えられますか?

AからBに対する損害賠償請求としては、
Aの不法行為に基づき、Bの車両に生じた損害に関しての、
損害賠償請求をすることが考えれられます。

なお、物損の場合には、よほど特別な物でない限り、
慰謝料は認められません。

6 ご質問⑥〜Bの通院によるAの対応
>6、Bが万が一通院など始めた場合、Aは対応の必要がでてきますか?

Bが通院を始めたのが、
今回の事故を契機にむち打ちなどの
症状が出たことによるのであれば、
その分について、治療費その他の損害賠償請求をされる
可能性自体はあります。

したがって、そのような請求があれば、
その請求に対して交渉等をする必要があるでしょう。

なお、この場合には、
自社の賠償責任保険が対応する場合があるので、
自社の保険会社に一報を入れた方が良いでしょう。

7 ご質問⑦〜追加の現場検証等について
>7、Aが人身事故を主張する場合、もう一度現場検証のようなものはあります
>か?
>Aは精神的つかれておりそういうことは望んでいない様子

前記の通り、人身事故として被害届を出すのであれば、
事件性の判断のために、警察による実況見分が行われ、
また、取り調べも行われる場合があります。

もちろん、基本的には任意のものになるので、
一切、協力しないという形でも良いのですが、

B側の供述に基づいて事故状況が警察に把握され、
資料ができあがってしまうと、
保険請求との関係で、不利になるおそれがあるので、
おそらく協力した方がベターでしょう。

8 ご質問⑧〜その他について
>8、その他注意点があれば教えてください。

お客様のご希望によるところかとは思いますが、
慣れない交渉をするというのは、
精神的に滅入ってしまうので、

>Aは精神的つかれておりそういうことは望んでいない様子

ということですと、代理人等を付けた方が楽ということは
あるかと思います。
交通事故の場合、保険会社も弁護士がついている案件とそうでない案件で、
交渉の仕方や言い分も大きく変わる分野であるというところもあります。

よろしくお願い申し上げます。