相続 遺産分割 相続税

未成年相続人の取り扱いについて

永吉先生
税理士の●●です。
宜しくお願いします。

前提
父親の相続の開始に伴う、遺産分割協議に際して、相続人には
妻と3人の娘さんがおり、このうち三女は未成年(18歳)です。
分割内容としては、娘様たちは全額放棄で、妻(お母さま)が全額取得でと
分割の合意しておりますが、
登記の関係から、司法書士様に分割協議では未成年者については、裁判所に代理人
を申し立てないとならない。それとともに、裁判所的には未成年の実質放棄
(全額妻)だと、認めてくれない。とのことです。
なので、三女様には1/6は代償にする旨の分割協議にしないと通らない。
とのことです。

質問
① この代理人に税理士(又は事務所の職員)がなることに法的問題やその他リスクはありますか?
または代理人はどなたが適切でしょうか?

② 上記三女様の分割上での放棄は出来ないのでしょうか?

③ 相続開始から半年ほど経過しており、裁判所への放棄手続き期間は過ぎてしまっています。
仮に3か月以内に代理人立てて放棄手続きしていれば、三女様も放棄できたのでしょうか?

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問①〜税理士の先生が特別代理人となるリスク

>① この代理人に税理士(又は事務所の職員)がなることに法的問題やその他リスクはあり
>ますか?または代理人はどなたが適切でしょうか?

裁判所が選任をしてくれれば、
特段税理士事務所にリスクが
あるとは思いません(結局、分割協議の内容まで
裁判所がチェックしますので)。

ただ、税理士さんやその事務所の職員さんの場合、
相続税申告などで、他の相続人と取引関係があると、
中立・公正とは言えないのではないかという疑いが残るので、
候補者として提出したとしても、
裁判所が税理士さんやその職員さんを特別代理人に選任
するかというと・・・・なかなか厳しいところは
あるのかなとは思います。

通常は、相続人以外の親族や
司法書士や弁護士がなることが多いです。
(もちろん、他の相続人と契約があったり、
代理人となっている弁護士は弁護士法上の
利益相反となるのでなれません。)

2 ご質問②〜分割協議で放棄する方法

>② 上記三女様の分割上での放棄は出来ないのでしょうか?

有効な遺産分轄協議というと難しいでしょう。

実務的には、遺産分割の「特別代理人」選任
をする場合、その判断の資料として、裁判所から「遺産分割
協議書(案)」というものの提出を求められます。

基本的に、「特別代理人」は未成年者の利益を
守るために選任が必要となるものなので、
法定相続分を下回るような遺産分割協議書(案)
ですと、裁判所はまず許可を出してくれません。
(配偶者控除等との関係で・・・というのは
すごくわかりますが、このような理由では、
裁判所は許可しません。)

その他、方法としては、分割時期が遅れるので、
専門家としてどうアドバイスするかは難しいですが、
三女が成年となるまで待つという方法もあります。

3 ご質問③〜相続放棄ができたのか?

>③ 相続開始から半年ほど経過しており、裁判所への放棄手続き期間は過ぎてしまっていま
>す。仮に3か月以内に代理人立てて放棄手続きしていれば、三女様も放棄できたのでしょう
>か?

この場合も、三女が相続放棄をすると
妻の相続財産が増えるという関係になるため、
利益相反にあたり、相続放棄について、
特別代理人の選任が必要です。

仮に、妻が先に(実務上は同時に)
相続放棄をするという場合であれば、
そもそも妻(親権者)が相続人ではなくなる
ため、利益相反にあたらないとされますが、
(なお、この点は形式的な立場で判断
しますので、遺産分割の場合には、内容がどうであれ、
特別代理人の選任が必要です。)

今回はそうではないので、特別代理人の選任が必要でしょう。

さらに、特別代理人選任の目的は、三女の財産を守ることにありますので、

相続財産がマイナスであるケース(借金から三女を守る等)
でなければ、裁判所が特別代理人を選任はしません。

よろしくお願い申し上げます。