いつもお世話になります。
●●です。
1.前提
A建設会社
得意先Bに1千万円(仮の数字)の金銭消費貸借契約書あり
得意先Bは経営状態が非常に芳しくない。外部からは破綻寸前と伺える。(民事再生
法などの法的な手続きはまだ)
得意先Bに1千万円の債権を同業者C(債権回収代行業者ではない一般の会社)に債
権譲渡をしたい。
目的はA建設会社には回収手立てもないし、損金処理もしたい。
2.質問
(1)A建設会社の同業者Cへの債権譲渡は適法か
債権の回収委託は弁護士または債権回収代行業者へしか依頼できないと理解していま
す。
債権譲渡は債権回収代行業者以外の者(今回ですと同業者C)に、この債権を1%の
10万円で債権譲渡することは適法でしょうか。
(2)仮に債権譲渡をした後に、同業者Cが100万円回収したとして、
同業者Cの債権回収益90万円(100万円-10万円)の一部をA建設会社へ報酬
として還流するような契約は可能でしょうか。
実質的な債権の回収委託になっているようなので無理だとは感じています。
(3)そもそも債権譲渡に対価を付さずに譲渡をする。ということは可能でしょう
か。
例えば同業者Cが今後回収した金額の全部または一部が譲渡対価とする。など。
そもそも対価がないと債権譲渡として成立していない。債権回収の委託と同じでしょ
うか。
上記の損金目的と矛盾しますが、目的は同業者Cが一部でも回収できれば、
会計上の貸倒損失が少なくなる、あるいは債権の一部だけでも回収したいです。
以上です。
宜しくお願い致します。
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問①~債権譲渡の有効性について
>(1)A建設会社の同業者Cへの債権譲渡は適法か
>債権の回収委託は弁護士または債権回収代行業者へしか依頼できないと理解していま
>す。
>債権譲渡は債権回収代行業者以外の者(今回ですと同業者C)に、この債権を1%の
>10万円で債権譲渡することは適法でしょうか。
そうですね。同業者Cが債権の回収等を
「業」として行っていない(反復・継続の意思がない)ということであれば、
債権譲渡自体は問題ありません。
なお、Cが反復・継続する意思で
債権を譲り受け、債権回収により利益を受けている
ということですと、
債権譲渡であろうが、債権回収の委託で
あろうが弁護士法・サービサー法に違反します。
2 ご質問②~還流するような契約
>(2)仮に債権譲渡をした後に、同業者Cが100万円回収したとして、
>同業者Cの債権回収益90万円(100万円-10万円)の一部をA建設会社へ報酬
>として還流するような契約は可能でしょうか。
>実質的な債権の回収委託になっているようなので無理だとは感じています。
そうですね。
おっしゃるとおり、このような契約ですと
実質的に債権回収を「業」としている委託に近くなりますので、
弁護士法違反、サービサー法違反の可能性自体
は高くはなります。
ただ、
実務的に一回そういうことをしたからといって、
弁護士法違反等が認定され、摘発されて問題となるケースは
ないと思いますが、例えばCが他にも同様のことをしている
ということですと危ないかと思います。
また、税務的にいうと、
債権譲渡をしつつ、このような契約をすることは、
実態としては、債権譲渡とこのような契約が一体の
ものと評価され、
10万円での譲渡ではないとされてしまう
リスクがあるとは思います。
つまり、この債権譲渡の対価は、
10万円+回収できた金額の一部(例えば、回収金額
の数%)と評価され、
債権譲渡時点で、譲渡損とできるのは、
1000万円ー(10万円+回収できる可能性のある1000万円×契約した%)
と評価されるおそれはありますね。
もちろん、法律行為の一体性(別とみるか1つとみるか)
については、事実認定と評価に関わる問題ですので、
可能性の範囲を出ませんが、そのようなリスクは一定程度
存在するかとは思います。
回収金額の数%は、回収時点で、益金とするので、
問題ないようにも思えますが、期ずれ等の問題は
発生しますし、回収見込みがある前提の契約と評価
されるでしょうから、額面額1%の譲渡が、低額譲渡に
あたるとされる可能性もあります。
3 ご質問③~対価のない債権譲渡
>(3)そもそも債権譲渡に対価を付さずに譲渡をする。ということは可能でしょう
>か。
対価をゼロとするという意味ですと
贈与による債権譲渡も認められています。
ただ、先生のご質問のご趣旨としては、
上記「2」の対価を回収金額と紐付けるという
ものかと思います。
そのような債権譲渡も有効と言えるでしょう。
(ただし、契約書等で明確にしておく必要はあります。)
弁護士法やサービサー法との関係でいうと、
形式的に債権譲渡であるか債権回収の委託であるかで
区別があるわけではなく、
実態的に弁護士法やサービス法に反する行為をCが行って
いるのかという点になりますので、
契約の形式を債権譲渡にすれば良い、債権の回収委託に
すれば良いなどの話ではありません。
この点について、回答としては、「2」と同様になります。
よろしくお願い申し上げます。