民法 所得税

財産分与の契約書形式について

永吉先生

いつも大変お世話になっております。税理士の●●です。

【前提】

離婚の際の居住用不動産の財産分与で、税金を安くしたいということから離
婚が成立してから財産分与を行う予定です。

【質問】

離婚が成立してから財産分与をするという口約束では信用できないので、契
約書を作成したいのですが、形式はどういった形にすればよろしいでしょうか。

よろしくお願いいたします。

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問

>離婚の際の居住用不動産の財産分与で、税金を安くしたいということから離
>婚が成立してから財産分与を行う予定です。
>離婚が成立してから財産分与をするという口約束では信用できないので、契
>約書を作成したいのですが、形式はどういった形にすればよろしいでしょうか。

2 回答

一般的には、財産分与の合意を離婚同時に
固めたいという場合には、離婚協議書内に
(財産分与)という項目を設けて記載する
ことが多いです。

「離婚協議書 雛形」などで検索すると
雛形等は簡単に見つけることができます。

そもそも、財産分与請求権は離婚成立時より発生
するもので、協議による離婚の場合の離婚の成立時は、
離婚合意後の届出・受理時ということになるので、

厳密には、離婚成立前に合意しているという
ことになるのですが、上記の離婚成立後に
発生するという財産分与請求権の性質から、
離婚成立を条件に効力が発生する合意と
合理的意思解釈されているものと思います。

登記実務も確認しましたが、
登記原因の日付は、財産分与の協議が
成立した日とされますが、

財産分与の協議が、届出前にされている
ケースでは、登記原因の日付は、
協議離婚の届出の日とされていますので、
上記のような合理的意思解釈がされているものと
考えられます。

このような解釈を前提とすると、
特別控除などの関係では、税務上も
届出前の離婚協議書による記載で足りる
ということになるかと思いますが、
合意書の解釈をより厳密にしたいということであれば、

財産分与について契約書に記載する際に、
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「乙は甲に対して、第〇条による離婚届けが◯◯市役所受理されたことを条件として、
以下の財産を財産分与義務の履行として譲渡する。」
【以下財産を特定する条項】」
※「第◯条」は、通常、協議離婚の場合には、
「◯年◯月◯日までに、離婚届けを〇〇市役所に提出することとする」
などと定めたものがありますので、その条項が入ります。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
などとすれば良いかと思います。

(問題となるケースは、離婚の合意(を証明するものも含む)
がないにも関わらず、離婚を見越して事前に財産を移転してしまった
ケースだとは思いますが。)

なお、離婚の条件を取り決める場合には、
特に財産を受け取る側の立場からは、

協議書の内容に執行認諾文言(つまり、
協議書記載の金銭支払義務や財産分与義務を果たさない場合に、
執行ができるようにするため)
を付して、公正証書を作成した方が良いでしょう。

離婚して条件が守られないことは残念ながら
ままあることですので。

よろしくお願い申し上げます。