相続 遺言 民法

法人に対する貸付金と遺言による寄付について

永吉先生

いつも大変お世話になっております。
税理士の●●です。

【前提】

顧問A:医療法人Bの前理事長
医療法人Bには、MS法人があり、サービス付高齢者住宅を運営している。
また顧問Aは、社会福祉法人Cの理事長でもある。

顧問Aからの相談です。
A顧問にはMS法人に対して多額の貸付金があります。(MS法人は、この借入金でサ高住を建設しています)
顧問Aは、MS法人に対する貸付金を、自身が没後、社会福祉法人Cへ寄付する、という遺言書を
作成したい、と考えています。

このような遺言書を作成することは可能でしょうか。

貸付金に関しては、返済予定表も作成されており、定期的な返済がされているようですが、
この返済が滞った場合、問題はありますでしょうか。

よろしくお願いいたします。

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問①〜貸付金債権の遺言の作成

>医療法人Bには、MS法人があり、サービス付高齢者住宅を運営している。
>また顧問Aは、社会福祉法人Cの理事長でもある。
>顧問Aからの相談です。
>A顧問にはMS法人に対して多額の貸付金があります。(MS法人は、この借入金でサ高住
>を建設しています)
>顧問Aは、MS法人に対する貸付金を、自身が没後、社会福祉法人Cへ寄付する、という遺
>言書を作成したい、と考えています。

>このような遺言書を作成することは可能でしょうか。

はい。民法上もちろん可能です。

遺言の文言として、
「【遺言者】が平成◯年◯月◯日に【MS法人名】に〇〇〇円貸付けたことによる貸金返還請求権(利息及び遅延損害金を含む)のうち、相続開始時までに返還されてない部分について、【社会福祉法人C】に遺贈する」
とすればよいでしょう。

法的には意味は変わりませんが、「寄付」という
言葉を出したいというのであれば、

依頼者さまのご意向次第では、
「遺贈する」→「遺贈により寄付する」としても
良いでしょう。

2 ご質問②〜返済が滞った場合

>貸付金に関しては、返済予定表も作成されており、定期的な返済がされているようですが、
>この返済が滞った場合、問題はありますでしょうか。

上記のように利息や遅延損害金を含む形にしておけば
特に問題ありません。

あるとすれば、時効期間の経過ということに
なるのかとは思いますが、

旧民法が適用されますので、
最後に返済されてから、
10年ということになろうかと思います。
長期間、返済が滞るようでしたら、
ご存命中に時効の完成猶予・更新措置を検討する
ことにはなるかと思います。

よろしくお願い申し上げます。