民法 消費税 税理士賠償責任

予期せず簡易課税が適用された場合の税倍保険の取り扱い

永吉先生

いつも大変お世話になっております。
税理士の●●でございます。

前提条件:
平成13年 簡易課税制度選択届出
平成26年 社長の代替わりにより当事務所関与
平成31年9月期
不動産取得で220万程度の還付申告をするも、
令和2年になってから原則課税ではないとして税務署から電話連絡
簡易課税との差額は約200万(中間納税あり)

各期の課税売上高
平成28年9月期 86,925,425円 99.99%
平成29年9月期 39,259,762円 22.03% ←基準期間
平成30年9月期 99,664,212円 100.00%
平成31年9月期 52,933,379円 78.38%

※ 申告のお知らせには簡易課税届日の日付が毎年載っていたため、
しっかり確認しておけば気づけたミスでした。

ご質問事項:
税賠保険の申請にあたって留意する事項は概ね下記でよろしいでしょうか。

・税理士のミスであるかどうか
税理士が平成30年9月末までに不動産取得の情報を得ていたかが問題となる。
平成31年9月期中であっても、不動産の決済日よりも前に情報を聞いていれば、
課税期間短縮の上で簡易課税不適用届け出を出すべきであるため、
情報をいつ伝えられたかが問題となる。

⇒ メール、電話、手紙、色々あると思いますが、口頭で話しを聞いていたという
説明で保険が降りるものでしょうか。
また、明示的に、「消費税の還付を受けたい」という申し出を受けていることが
必要でしょうか。

・損害額の確定時期

簡易課税の縛り期間である2年間は経過済みのため、単純に、
単年度の還付不可額から減価償却による法人税の回復額を引いた金額が損害額となる。

よろしくお願い申し上げます。

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問①〜税理士のミスであったか否か〜

>・税理士のミスであるかどうか
>税理士が平成30年9月末までに不動産取得の情報を得ていたかが問題となる。
>平成31年9月期中であっても、不動産の決済日よりも前に情報を聞いていれば、
>課税期間短縮の上で簡易課税不適用届け出を出すべきであるため、
>情報をいつ伝えられたかが問題となる。

>⇒ メール、電話、手紙、色々あると思いますが、口頭で話しを聞いていたという
>説明で保険が降りるものでしょうか。

そうですね。口頭での説明で明確な証拠がない
というのみで、保険金が支払われなくなるわけでは
ありません。

ただし、
保険会社としては、モラルハザード
をおそれますので、
その他の証拠や供述書等の証拠資料を作成し、
説明を聞いていないというのはおかしいという
流れを説得していくことは必要になるとは思います。

この辺りは、保険会社との交渉の中で、どんな
資料が必要か等を考え、随時進めていく必要があると思います。

説得ができない場合には、一旦降りない
ということになりますが、

最終的に、お客様に訴えられ、こちらも争ったにも関わらず、
裁判所で判決が出た(またはそのやり取りの中で、
保険会社とも連絡を取りつつ、承諾のもと、和解した)
というケースでは、保険金は支払われます。

つまりは、最終的に税理士の先生が責任を
負う金額が明確になれば保険はおります。

>また、明示的に、「消費税の還付を受けたい」という申し出を受けていることが
>必要でしょうか。

税理士の責任としては、
明示的に「消費税の還付を受けたい」と言われて
いないから責任がないわけではありませんので、
このような申出が必要というわけではありません。

ただ、確かに明示的に「消費税の還付を受けたい」と
言われていたのに届出を失念したというケースの
方が、税理士の責任が認められやすくなるということは
あるとは思います。

2 ご質問②〜損害額について

>簡易課税の縛り期間である2年間は経過済みのため、単純に、
>単年度の還付不可額から減価償却による法人税の回復額を引いた金額が損害額となる。

このケースでは、
本来の会計処理と実際の会計処理どちらも税抜きと考えられるため、
ご指摘の通り、単年度で回復することになります。

厳密には
単年度の「還付不可額」から「還付金が益金となると仮定した場合にそれに相当する税額」
を差し引いた金額が損害額となります。

なお、税賠保険の場合には、規約上、損害賠償金が益金となる
場合にそれに応じて生じる税額は保険対象外とされています。