贈与 不動産 民法

太陽光発電の名義変更前の負担付贈与契約

永吉先生

いつも大変お世話になっております。税理士の●●です。

【前提】

個人で太陽光発電事業を行っています。その個人が会社を設立して今年中に
負担付贈与する予定で、負担は太陽光発電設備に係る借入金です。
負担付贈与契約書を作成し、契約書に年内に所有権を移転する旨を記載して
います。ただし、個人で受けている許可の関係で電力会社との契約の名義変更
が半年後になります。契約後半年分の売電収入は個人の口座に入金されます。
借入金の名義も名義変更後に行われる予定です。

【質問】

負担付贈与契約書で所有権が移転しているとしても、使用収益が個人にある
場合は所有権移転とするのは難しいでしょうか。

よろしくお願いいたします。

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問
>負担付贈与契約書で所有権が移転しているとしても、使用収益が個人にある
>場合は所有権移転とするのは難しいでしょうか。

2 回答

まず、民法上の設備自体の所有権については、
当事者の意思表示により移転しますので、

>負担付贈与契約書を作成し、契約書に年内に所有権を移転する旨を記載して
>います。
とのことですと、
動産となる太陽光設備(太陽光パネルやそれに付随する発電機などです。)自体の
所有権は、契約書に定められた内容に従って移転することになります。

ただし、
太陽光発電事業者は、
発電設備ごとに行政からの認定を受けた後(電気事業者による再生可能
エネルギー電気の調達に関する特別措置法9条)、電力会社に対して、
再生可能エネルギー電気を供給し、
一定の価格により再生可能エネルギー電気を買い取る契約(以下「接続契約」といいます。)を
締結することができ、締結後には、接続契約上の供給者の地位を有することになります
(同法16条)。

電力会社からの入金は、この接続契約に基づき、
接続契約上の供給者の地位を有する者(名義変更までは個人です。)に
支払われるものですので、必ずしも、
太陽光設備の所有権の所在とは、関係がありません。

つまり、先生のご質問のご趣旨が、
所有権の移転を契機として、
個人の収入金額をゼロにして、法人の売上に
できるか(通常の法人成り)というご趣旨であれば、

>個人で受けている許可の関係で電力会社との契約の名義変更
>が半年後になります。

ということで、半年間は、個人の収入金額を
ゼロにすることは難しいということになります。

なお、以下は余談ですが、
一般的に、太陽光発電事業を個人から、
太陽光発電のための特別目的会社に対して譲渡を行う場合には、
太陽光発電事業全体を譲渡する事業譲渡契約と考えるのが一般的で、
個人が同事業に関して負う義務を会社に移転する(個人が義務を逃れる)場合には、
各債権者からの同意が必要です。

>借入金の名義も名義変更後に行われる予定です。
とのことですので、
借入金の債務者を変更することについて、
金融機関の承諾は取れているとのことと存じますが、
仮に太陽光設備を設置している土地が借地の場合には、
土地の使用者が個人から会社に代わることにつき、
理論上は賃貸人の承諾が必要ですので、注意が必要です。

よろしくお願い申し上げます。