相続 遺言 遺留分 不動産

遺留分減殺請求について(急いでおります!)

永吉先生

お世話になります。
●●です。
遺留分の減殺請求についてご教示ください。

≪状況≫
相続開始:令和元年3月(相続税申告期限:令和2年1月)
相続人:配偶者と子A・子Bの3名(配偶者と子Bが同居)
遺産:自宅の土地家屋(路線価で約2億円)、現金預金(約3億円)
被相続人の自筆証書遺言があり、「全て妻に相続」という内容

≪質問≫
①遺留分の請求権の期限について
遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを
知った時から1年間行使しないときは減殺請求の権利が消滅とありますが、
「知った日」とは 具体的に何時を指すのでしょうか?
遺言があったことを知った日、裁判所の検認が行われた日、遺言の内容を
知った日など考えられますが、何時と考えれば良いでしょうか。

②遺留分で引き渡す財産について
子Aは遺留分として、自宅土地の一部(持分)を現金預金を請求してますが、
配偶者は土地持分は渡さず全て現金預金で支払うことを希望しています。
子Aの請求に対して配偶者はどこまで従う義務があるのでしょうか。
仮に配偶者に、渡す財産を選択する権利があって、二人の希望が平行線の
まま結論が出ない場合、最終的にはどの様な解決方法になるのでしょうか。

③遺留分の金額について
遺留分の金額を計算する場合、土地については実勢価額を基にした金額で
計算して欲しいと子A・子Bから希望が出ています。
例えば子Bが土地の時価を2.5.億として遺留分請求をして配偶者と合意し、
土地の一部と現金預金で遺留分相当額を取得して期限内に申告納税を済ませ
た後、子Aが3億円の鑑定評価を根拠に遺留分請求してきた場合、子Bは
この土地の時価(3億円)を基に遺留分の再計算をして差額を配偶者に請求
することは可能でしょうか。

26日に上記に関する協議をすることになっています。
お忙しいところ誠に恐縮ですが、早めに回答を頂けますと幸いです。
宜しくお願い致します。

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

>相続開始:令和元年3月(相続税申告期限:令和2年1月)

ということで、旧民法(相続法改正前)が適用される
ケースですので、その前提で回答します。

1 ご質問①〜遺留分の請求期限について

>遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを
>知った時から1年間行使しないときは減殺請求の権利が消滅とありますが、
>「知った日」とは 具体的に何時を指すのでしょうか?
>遺言があったことを知った日、裁判所の検認が行われた日、遺言の内容を
>知った日など考えられますが、何時と考えれば良いでしょうか。

一般法律論としては、
遺言内容を知り、
遺留分が侵害されていることを知った日
と考えることになります。

ですので、挙げていただいたところですと
遺言内容を知った日が最も近いことと
なります。

ただし、この「知った時」というのは、
個別具体的な判断となりますので、

弁護士であれば、相続開始から1年以内に
請求します。

この請求の形式については、民法上特段
制限はありませんが、請求があったことを
証拠上、明確にするため(争点を増やさないため)
内容証明等で請求するのが実務上一般的です。

ただ、今回のケースでは、
>子Aは遺留分として、自宅土地の一部(持分)を現金預金を請求してますが、
>配偶者は土地持分は渡さず全て現金預金で支払うことを希望しています。

>遺留分の金額を計算する場合、土地については実勢価額を基にした金額で
>計算して欲しいと子A・子Bから希望が出ています。

ということですと、証明できるかは別として、
実体法上は、これで遺留分減殺請求はあったとされるでしょう
から、遺留分を請求される側からすれば、
時効については、あまり期待しない方が良いでしょう。

2 ご質問②〜遺留分で引き渡す財産について

>子Aは遺留分として、自宅土地の一部(持分)を現金預金を請求してますが、
>配偶者は土地持分は渡さず全て現金預金で支払うことを希望しています。

>子Aの請求に対して配偶者はどこまで従う義務があるのでしょうか。
>仮に配偶者に、渡す財産を選択する権利があって、二人の希望が平行線の
>まま結論が出ない場合、最終的にはどの様な解決方法になるのでしょうか。

最終的に、遺留分侵害者(配偶者)は、実際に
価額弁償をすることで、現物返還を免れることが
できます(旧民法1041条1項)。

ですので、最終的には、すべて現金預金で支払うことは
可能です。

ただ、この価額弁償は、実際に支払い(履行の提供)まで
求められますので、配偶者がお金を払わないうちは、

子Aは、現物返還の請求をすることができる
ことになります。

最終的には、裁判により、

「被告(配偶者)は、原告(子A)に対し、被告が
原告に対して民法1041条所定の遺贈の目的の価額
の弁償として〇〇円の支払いをしないときは、別紙物件
目録記載の土地の持分の〇〇分の〇〇について、
◯年◯月◯日遺留分減殺を原因とする所有権移転登記手続きを
せよ」

等の条件つき判決がされることになります。

3 ご質問③〜遺留分の金額について

>例えば子Bが土地の時価を2.5.億として遺留分請求をして配偶者と合意し、
>土地の一部と現金預金で遺留分相当額を取得して期限内に申告納税を済ませ
>た後、子Aが3億円の鑑定評価を根拠に遺留分請求してきた場合、子Bは
>この土地の時価(3億円)を基に遺留分の再計算をして差額を配偶者に請求
>することは可能でしょうか。

まず、遺留分算定基礎財産に
算入される金額は、客観的に民法上の時価となります。
ですので、子Bと配偶者が合意したとしても、
子Aには関係がありませんので、子Aは3億円の
遺留分請求をし、時価が3億円であればそれを
前提に遺留分を計算します。

一方で、
>子Bが土地の時価を2.5.億として遺留分請求をして配偶者と合意

ということであれば、
配偶者や第三者に騙された等、合意に関して詐欺や錯誤を立証し
認められるケースは別として、

あくまでも、子Bは、その金額で合意したわけですから、
3億円を前提に差額を請求することはできないと考えられます。

よろしくお願い申し上げます。

永吉先生

早速のご回答ありがとうございました。
追加で確認させてください。

子A、子Bの二人から「土地の一部(持分1/10)と現預金」という同様の
遺留分請求があった場合、請求された配偶者は子Aに対しては「現預金」で
全て支払い、子Bに対しては「土地の持分1/10+現預金」を渡すという
使い分けはできるのでしょうか。
配偶者には2人分の遺留分相当額の現預金がある前提です。

宜しくお願い致します。

●●先生

追加でのご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

なお、最初の質問と同様、
>相続開始:令和元年3月(相続税申告期限:令和2年1月)
ということで、旧民法(相続法改正前)が適用される
ケースですので、その前提で回答します。

1 ご質問

>子A、子Bの二人から「土地の一部(持分1/10)と現預金」という同様の
>遺留分請求があった場合、請求された配偶者は子Aに対しては「現預金」で
>全て支払い、子Bに対しては「土地の持分1/10+現預金」を渡すという
>使い分けはできるのでしょうか。
>配偶者には2人分の遺留分相当額の現預金がある前提です。

2 回答

まず、遺留分減殺請求は、
各請求者と請求された者の個別的な関係の問題
となります。

子A・子Bの各々と合意ができるのであれば、
そのような方法は可能です。

また、裁判までいって判決による場合にも、
一定の訴訟技術を必要としますが、可能です。
(最判平成12年7月11日)

よろしくお願い申し上げます。